はじめまして! ソシャグ編集部です。この記事では、社会にとって良い活動 = ソーシャルグッドな活動に取り組まれている方にインタビューをして、その活動内容をご紹介します。今回のテーマは「地域への移住・定住」です。ここ数十年、過疎化や少子高齢化に伴う人口減少が地方では問題となっていますよね。人口減少が進むことで、地域での働き手が減少するほか、耕作されない田畑の増大や空き家の増加などの問題が深刻化しているのです。そんな地方の社会課題の解決に取り組んでいるのが、秋田県にかほ市の地域おこし協力隊(以下、にかほ市地域おこし協力隊という)です。にかほ市地域おこし協力隊は「にかほ市移住リエゾン」という移住・定住サポートをとおして、にかほ市の空き家問題、人口減少問題の解決を目指しています。さらに、「にかほ市移住リエゾン」では移住・定住者を増やし、にかほ市全体の活性化をしようとしています。今回、にかほ市地域おこし協力隊の取り組みを紹介するため、「にかほ市移住リエゾン」に携わる小林裕高(こばやし・ゆたか)さんにインタビューを行いました。Q.1 なぜソーシャルグッドな活動を始めたんですか?もともと秋田県井川町に生まれ育ち、同県秋田市内でアパレルの会社で働いていましたが、たくさんの人との出会いや世界的なイベントをとおして、「目の前の相手を喜ばせること」が自分の喜びになっていることに気がついたんです。なにより地元である秋田が大好きなので、「秋田の応援団・協力隊でありたい」と考え、秋田県内の地域おこし協力隊の仕事にたどり着きました。現在は、にかほ市地域おこし協力隊として「にかほ市移住リエゾン」(以下、リエゾン)で、にかほ市の空き家問題、人口減少問題に取り組んでいます。にかほ市では移住者の受け入れを積極的に行っていて、移住定住ポータルサイトによる頻繁な情報の発信や、空き家バンクによる空き家の仲介制度も好評です。市独自の支援制度も充実していて、特に子育て世帯には保育料の完全無償化、副食費の全額助成、18歳まで医療費無料と手厚い制度を設けています。しかし、課題に取り組むうちに、移住者や移住希望者など「すべての人の気持ちにしっかり寄り添えているのか?」という疑問が出てきました。なぜなら、住まいや仕事、暮らし、医療環境、教育・保育環境、家庭環境などなど、一つとして同じ相談内容はなく、暮らしの悩みはまさに十人十色だったからです。そこで、もっと地域と移住者・移住希望者が繋がり、ちょっとだけでも助け合う関係を築くにはどうしたらよいか?と考えるようになりました。例えば、地域の人と移住してきた人を結ぶ場所や、移住してきた人たち同士が情報交換できるコミュニティがあれば、もっと人と人とのコミュニケーションが進むのではないかと考えました。さらに地元の高齢世帯の方から空き家を手放したいという相談を受けた時にも、この「コミュニティ」や「地域での連携」の必要性を強く感じるようになりました。例えば、空き家の相続登記がされていなかったり、家財道具を処分したいのだが高齢だから自分達でできるかどうか不安であったり、「お仏壇、遺影の処分方法は?」など相談内容はさまざまです。移住者・移住希望者だけでなく、地元で空き家を抱える住民の人達の抱える悩みや不安な気持ちに応えられるよう、色んな職種や特技のある人達と繋がっていく場やコミュニティは欠かせないと感じています。Q.2 活動内容を教えてください空き家問題や人口減少問題に取り組む中で見えてきた「コミュニティ」「地域での連携」という課題について、次のような取り組みをしています。取り組み1.「徹底ヒアリング」で移住者・移住希望者の望みの暮らしにフィットした情報を提供町に暮らす人や企業の紹介のほか、希望があれば「移住体験ツアー」を企画し、実際に町の暮らしを体験してもらいます。「お試し移住体験住宅」もあるので、地元のスーパーで買い物して生活してみるなどプチ移住をすることもできます。にかほ市は海と山に恵まれた町で、農業や漁業、林業に興味のある方にはぴったりな町とも言えますし、その一方でものづくりの町という顔も併せ持ち、製造業の盛んな町でもあります。どんな働き方をどんな暮らしの中でしていきたいのか、自分たちリエゾンメンバーが橋渡しをすることで移住者一人ひとりの「にかほ暮らし」をつくり上げていってもらえればと思っています。取り組み2.「ブラにかほ」で移住者と地域の人達との町歩き交流ガイドなどは設けず、参加者の視点や観点で町の風景や地元の人との交流を深めてほしいと思い、この町歩きイベントを始めました。お話しするのが苦手という人がいたら、リエゾンメンバーが間に入り和ませています。また、イベントの様子を動画で撮影しSNSで発信することで、移住に興味のある人たちや、にかほ市出身者に届けるようにしています。動画配信をすることで、故郷への想いやにかほ市への関心に繋げて「故郷にUターンしようかな」「にかほ市に移住してみようかな」と思ってもらいたいという狙いもあります。取り組み3.「にかほ暮らしサポーター制度」で、にかほ暮らしの困りごと・不安解決と地域との繋がりつくりを支援町で暮らす人の「好き」や「得意」を活かして、にかほ暮らし1年生の移住者のお悩みを解決をしてもらおうという取り組みです。2021の冬からスタートし現在100名ほどの住民の皆さんにサポーター登録をしていただいてます。車の整備士、書道の先生、魚屋さん、企業の社長さん、飲食店さん、民謡歌手、保育士さん、高校生などサポーターの「得意」は多種多様です。取り組み4.対面コミュニケーションと動画配信を組み合わせた「空き家情報発信」空き家の情報発信は、地域向けには対面による対話やチラシ渡しを地道に繰り返しながら、移住に興味のある人向けにはVR撮影した映像やYouTube動画での情報発信を強化し、より見やすくわかりやすくしています。SNSでのコンスタントな投稿を続けることが広報となり、視聴者数・問い合わせ件数ともに上がってきています。現在、空き家バンクに登録されている物件の半数が交渉中となっていて、地域での顔が見える関係づくりと分かりやすい動画配信が、「空き家を手放したい」という方の気持ちの後押しに繋がっているように感じます。Q.3 活動を始めて、どんな変化がありましたか?大きく2つのエピソードがあります。1つ目は、移住希望者さん向けにオーダーメイドの「移住体験ツアー」をすることになり、地域のサポーターさんへの協力を求めたこと。2つ目は、課題解決のための活動を通じて、地域の人から直接情報や問い合わせが入るようになったことです。1.ツアー後にかほ市に移住し、新たな生活を送られているご夫婦についてご夫婦からは、「いずれ飲食店をやりたいが、農業と林業にも興味がある」という希望をお聞きしていました。なので、「移住体験ツアー」では、にかほ暮らしサポーターに登録してもらっている農業法人と林業事業者の社長さんとの交流を組み、「実際にどんな働き方ができるのか?」という観点から具体的な年間スケジュールなどを教えてもらいました。社長さん二人には熱心に説明していただき、ご夫婦は現在、林業に携わっています。これは地域の方との横の繋がりや連携を築いていたからこそ実現できた「移住体験ツアー」でしたし、実際に携わっている人達から生の話を聞けたご夫婦は、人生の一大決心である移住を決断されました。多忙な時期にかかわらず、ツアーを快く引き受けてくれたお二人には感謝の思いしかなく、後日リエゾンとして最大級の感謝をお伝えしました。2.地域住民の皆さんからの声掛けが多くなってきた「空き家を手放したい人がいるよ」と直接声掛けされるなんて、今までは考えられなかったことです。でも、「にかほ市移住リエゾン」という存在が認知されるようになって、「にかほ暮らしサポーターになりたい!」という声や、町歩きイベント「ブラにかほ」について「次はどこの地域を歩くの?」という問い合わせがあるなど、地域の関心の高まりを感じています。「にかほ暮らしを一緒に楽しんでくれる仲間が増えてきてるなぁ」と嬉しいですね。Q.4 活動を通して、将来達成したい目標はありますか?リエゾンとして、秋田県にかほ市への移住定住者を増やすと共に、空き家バンクへの登録件数を増やし、放置された空き家を活かせる取り組みをしていきたいです。例えば、空き家を活用した地域住民との交流拠点づくりや、セカンドライフの世帯もしくはセカンドライフの女性のシェアハウスなど、地域の暮らしに根差した空き家の活用ができればと考えています。また一方で、移住希望者の仕事マッチングに課題を感じているので、企業との連携を図り、空き家を社員寮として活用したり、外国人実習生の受け入れ拠点として活用するなど、住居と仕事を組み合わせての課題解決など、夢は広がります。ソシャグでは、移住に興味のある方や企業さん・団体さんとのつながれる機能が提供されると聞いているので、期待しています。Q.5 活動に参加したい人や応援したい人へ、メッセージをお願いします!僕自身、社会の課題を解決するためには、ただやるのではなく、「楽しく」「自分が一番楽しむ」を心がけています。相談者や地域の悩みや不安を解決するのは大変なことも時にはありますが、それを「楽しむ」に脳内変換して「楽しく解決」することを心がけています。秋田県にかほ市では「にかほ市移住リエゾン」が市と移住希望者の橋渡しを行っていて、関係機関や地域住民と連携し、「お試し移住体験ツアー」や「オンライン移住相談」も随時受付中です。活動内容に共感し、ともに活動していける企業・団体さん、仲間、「にかほ市への移住を考えてみたいな」と思ってくれる方は、ぜひ移住定住ポータルサイト「にかほーむ」からご連絡ください。