はじめまして! ソシャグ編集部です。この記事では、社会にとって良い活動 = ソーシャルグッドな活動に取り組まれている方にインタビューをして、その活動内容をご紹介します。今回のテーマは「ユニバーサルツーリズム」です。先の東京パラリンピック前後は、障がいを持つ方々の目線で街のユニバーサルデザインを考え直す機運が高まりましたが、その後、誰にとっても過ごしやすい環境のために、十分な改善が行われていると言えるでしょうか?今回お話を伺った櫻井さんは、難病から生活が一変したご自身の経験を通し、「当事者の視点」でユニバーサルツーリズムを広める活動を行われています。治療やリハビリを続けながら、障がいを抱える方々の旅行支援を続けられ、同時に相互理解や協力の輪を広めるための講演にも精力的に取り組まれている、櫻井さんの言葉やご姿勢からは、障がいの有無を越えてウェルビーイングに生きる力が、その尊さが感じられます!Q.1 なぜソーシャルグッドな活動を始めたんですか?突然の病気で体の自由を失い、人の助けがないと日常生活の多くが制限されてしまう生活を続ける中で、会いたい人に会いに行けるうちに、行きたい場所に行けるうちに、やりたいことがやれるうちに、という意識を強く持つようになりました。そして、必死の思いで闘病しながら、初めての一人旅に出ようと決意したのです。旅先では、出会った人の優しさや、目に映る各地の景色に心から感動し、涙が溢れました。この経験から、自分と同じように難病や困難と向き合う方にも人生を楽しんでほしい、という思いを抱き、難病や各種の障がいと向き合う仲間と活動をスタートしました。私たちが旅を通じて「当事者の視点」でみなさんに寄り添うことで、社会や地域課題の解決策も見出し得ると考えながら取り組んでいます。Q.2 活動内容を教えてください櫻スタートラベル合同会社は、難病や障がいを有するスタッフが中心となって、当事者目線で事業を企画運営し、「誰でも、好きなときに、好きな場所へ」自由に旅行や活動が出来る社会の実現を目指しています。具体的には、「ユニバーサルツーリズム」を軸に次のような活動を行っています。活動1.オーダーメイド旅行企画難病や各種障害、疾患の当事者だからできるピアサポート的な立ち位置で、参加者の各種障害や疾患に合わせたオーダーメイドの旅行を企画し、予約手配から旅行全般のサポートを行います。時間的な制約や介助者の不足を解決するために、参加希望者のご要望の日程に合わせて自らも治療・リハビリなど医療を調整し、旅行の現場では家族や仲間の一員となって付き添いサポートします。活動2.障がい者の就労支援や業務サポート事業主でもある自分自身が闘病しながら仕事を両立することを通して、挑戦してきた課題解決や体験を活かして、一般就労が困難な方でも治療と就労が両立可能となるよう、柔軟に業務への取り組み方を試行錯誤しながら、就労支援や業務サポートを行っています。活動3.教育機関や企業への研修教育機関や企業などで、日頃は難病や障がいを持つ人と接する機会が少ない方々を対象に、私たちの具体的な支援活動を元に研修や講話を行うことで、障がいを持つ人たちの様々な声や実際の姿に触れてもらい、課題を共有する機会や支援活動に興味を持つきっかけ作りを行っています。Q.3 活動を始めて、どんな変化がありましたか?疾患や障がいの状況は刻々と変化して行き、特に進行性難病の当事者は、入院治療・リハビリ・服薬管理など日々の体調管理に多くの時間をかけています。そのような状況を踏まえ、旅行を希望されるそれぞれの方が抱える苦手な面や不安な部分を、お一人ずつ丁寧に伺いながら、準備に期間や時間がかかっても、苦手や不安をなるべく解決するために、さまざまな工夫を重ねています。下見や準備では現地へ直接足を運ぶようにし、受入施設との交渉も重ね、不安を最小限まで解消した状態で安心して旅行を楽しんでいただけるように心がけています。最近は、旅行業界だけでなく、幅広い企業様・自治体・学校の皆さまにも、私たちの活動に興味を持っていただくようになりました。様々な事例を通して感じた当事者としての視点や、一緒に活動に取り組むことで得られた知識だけでない大切な気付きや学びをお伝えしています。Q.4 活動を通して、将来達成したい目標はありますか?「誰でも、好きなときに、好きな場所へ」障がいの有無に関わらず自由に旅行や活動が出来る社会の実現に向けて、私たちの活動を通して見えてきた課題を一つずつ解決しながら、ウェルビーイングな社会の実現を目指します。難病の当事者は、多くの「時間」を闘病生活に費やすため、時間的・経済的・体力的に就労が難しい傾向にありますが、十分な収入を得て生活が安定しないと人生設計は難しく、余暇活動を楽しむことは難しい、と感じる方が多くいらっしゃいます。自由に出かけたくても、介助者を確保する難しさから断念してしまうことも多く、もともと体調管理が難しく精神的な不安もあり、余暇活動を楽しめない傾向にあるのです。でも、多くの方に「ユニバーサルツーリズム」へ興味をもってもらい、ご支援いただくことで、実現できる夢や可能性はたくさんあります!完治が難しい病気や様々な障害で抱える心の痛みや葛藤は、簡単に消せるものではありませんが、様々な困難があっても生き甲斐や希望を持てるような、そんな社会であってほしいと願い、活動を続けています。Q.5 活動に参加したい人や応援したい人へ、メッセージをお願いします!学校などで行う講演では、配慮が必要な方々に対してどんなお声掛けが必要なのかを一緒に考えます。若い皆さんには、街中で配慮が必要な方を見かけたら、その方の立場に立って考えたり、必要なら声をかけたりしてほしいし、もしもいつか大切な人が困難な状況になっても、生活や心の支えになれるように、夢と希望を持って社会に出て行ってくれたらうれしい、とお伝えしています。「障がい」や「難病」に関する難しい法律や考え方をお話しすることもあるのですが、皆さんに伝えたいのは、今の人と人との繋がりを大切にしてほしい、ということです。難病の私たちでも、誰かのために出来ることがあります。コロナ禍の厳しい状況を経て、これからも皆さんと一緒に社会の課題の本質と向き合いながら、人や夢に寄り添えると信じています。櫻スタートラベル合同会社Facebook(@sakurastartravel )