近ごろよく耳にするようになったSDGsという言葉。しかし、実際にSDGsに取り組みたいが具体的に何をすればいいかわからない、という方もいらっしゃると思います。そこで本記事では、SDGsに関する企業の活動例や個人でもできる取り組みをご紹介します。この記事の監修者小田 勝宣(おだ かつのり)第6回SDGs検定取得。SDGsに関連したWebメディア記事執筆やブログの運営など実績多数。大学事務職員時代にSDGsに関する企画立案、運営業務に携わったことからSDGsに興味を持つ。現在はSDGs未来都市に選定された「岩手町」へ移住し、地域おこし協力隊として、地方におけるSDGsの取り組み強化に貢献している。企業によるSDGsの取り組み事例10選ここでは、食品・自動車・報道関連などといった幅広い分野から、10の企業の取り組みをピックアップしてご紹介します。TBS:地球を笑顔にするWEEK(画像:地球を笑顔にするWEEK|TBSテレビ)TBSが2022年10月31日〜11月6日に行った「地球を笑顔にするWEEK」は、SDGsにまつわる発信を重点的に行うプロジェクト。ニュースやバラエティなど様々な番組でSDGsを取り上げることで、より身近に感じ、楽しく実践してもらおうという取り組みです。またテレビだけではなく、ラジオ・YouTube・Twitterなどでも積極的に情報発信をしていました。くら寿司:お寿司で学ぶSDGs(画像:出張授業 お寿司で学ぶSDGs|くら寿司|回転寿司)くら寿司は、回転寿司を通して水産業や食について考える、小学生向けの出張授業を提供しています。子供たちが体験型の授業を通して現状の問題点を学び、それをどう解決するかまで考えていくという内容です。将来を担う子供たちがSDGsについて考える機会にもなるほか、一緒に参加する親御さんに企業が行う別の取り組みを知ってもらう機会にもなっています。ハウス食品:みんなでエコにチャレンジ(画像:みんなでエコにチャレンジ | Come on House(カモンハウス) | ハウス食品グループ本社の会員サイト)マロニーちゃんでおなじみのハウス食品は、食に関連して親子で一緒に取り組めるエコな活動事例を紹介しています。普段の食卓で残さず食べることの大切さや、賞味期限とは何かについてなど、子供でも実践できるような取り組みを丁寧に解説しているのが特徴です。親子で一緒に考える機会を提供することで、身近なところからのSDGsの実践を促進しています。江崎グリコ:植物生まれのプッチンプリン(画像:植物生まれのプッチンプリン | 商品ラインアップ|プッチンプリン | グリコ)食品メーカーのグリコは、卵や乳などの動物性原料を使わず、植物性原料のみで製造された「植物生まれのプッチンプリン」を販売しています。動物性原料を使用しないことで、卵・乳アレルギーの人や動物性原料を避けている人でもプリンを食べられるようになりました。また、2022年に千葉県流山市立新川小学校で、この容器を文房具にリサイクルするという体験型の出張授業が行われました。資生堂:持続可能なパッケージ開発化粧品メーカーである資生堂は、独自の容器包装開発ポリシーを制定し、持続可能な容器の開発を進めています。容器の適正化や軽量化・容器に使う素材の吟味、「つけかえ・つめかえ」を促すデザインの設計などを行い、プラスチック使用量の軽減をめざす取り組みです。くわえて、空き容器のリサイクルや環境への影響を最小限にする原材料調達など、社外との関わりにおける取り組みにも力を入れています。イオン:持続可能なカカオの調達(画像:フェアトレード認証 | 環境への取り組み - イオンのプライベートブランド TOPVALU(トップバリュ))イオンは2030年までに、自社で使用するカカオすべてを持続可能であると裏付けがとれたものへ変更するという目標を掲げています。カカオ生産の多くはアフリカの発展途上国が占めていますが、安価な取引で生産者が収入を得られず、苦しい生活を強いられているのが現状です。そこで公正な価格で取引するフェアトレードを推進することで、生産者やその国の人々の生活が守られ、長期的な事業の運用に繋がります。キリン:スリランカにおける紅茶農園支援(画像:スリランカにおける紅茶農園支援 | 原料生産地と事業展開地域におけるコミュニティの持続的な発展 |キリンホールディングス)大手飲料メーカーのキリンは、スリランカの紅茶農園が持続可能な農園認証を取得するための支援と、農園の子供たちが通う学校に書籍を寄贈する活動を行っています。2020年には、持続可能な農園認証制度「レインフォレスト・アライアンス認証」を受けたスリランカの農園のうち、約30%がキリンの支援によって認証されました。また、書籍はすでに200校に寄贈され、子供たちの教育水準向上と農園の安定した運営に貢献することが期待されています。トヨタ:トヨタの森(画像:トヨタ | トヨタの森)トヨタは、多様な生物の暮らす里山環境を整備し、森の継続的な調査や自然を楽しく学ぶ教育活動を行っています。トヨタの森には動物400種以上・植物450種以上が生息し、中には絶滅危惧種に指定されている珍しい種も生息するなど、生物多様性の保全に貢献しています。さらに、多くの体験プログラムが用意されており、森に訪れる人が自然をより身近に感じられるような工夫もなされています。アクセンチュア:ジェンダーダイバーシティ大手コンサルティング会社のアクセンチュアは、「平等で多様性を受け入れる企業文化」を目指した様々な取り組みを行っています。中でもジェンダーバランスの取れた職場環境の構築に力を入れ、現在では27万人以上の女性が活躍しています。2021年には日経WOMAN「女性が活躍する会社Best100」で総合1位を受賞しており、この先2025年までに、社員の男女比を1:1にすることも目指しています。ソフトバンク:ダイバーシティの推進ソフトバンクは、多様な人材が個々の能力を発揮できる環境の整備に取り組み、公正な評価に基づく役職や処遇の決定を行っています。女性の活躍推進はもちろん、障がい者採用やLGBTQに関する取り組みなどを通して、会社全体としてダイバーシティの推進を目指しています。結果として女性活躍に関する取り組みが優良な企業と認定され、PRIDE指標(LGBTQに関する取り組みの評価指標)における最高位を2017年から6年連続で受賞しています。なぜ企業はSDGsに取り組むべきなのかここまで各企業の取り組みをご紹介してきましたが、そもそも企業がSDGsに取り組むのはなぜなのでしょうか。ここからは、企業がSDGsに取り組むべき理由を5つご紹介します。企業価値・企業イメージの向上企業の社会的責任(CSR)が求められている今、SDGsに取り組むことは、企業イメージを大きく向上させてくれます。世間の約7割の人が、企業の「SDGs」に対する取り組みを知るとその企業の好感度が上がると回答しました。(出典:カウネット)またSDGsに取り組むことで、上で紹介したアクセンチュアやソフトバンクのように労働環境が整備され、従業員のモチベーションアップにも繋がります。くわえて、SDGsに注力する企業に対して取り組みの効果を尋ねた調査では、企業イメージの向上が37%で最も多く、次いで従業員のモチベーションの向上が31%でした。(出典:帝国データバンク)このように、SDGsへの取り組みは企業価値を高める効果があります。ビジネスチャンスに繋がる環境省によると、SDGs によってもたらされる市場機会の価値は年間12兆ドル、2030年までに世界で創出される雇⽤は約3億8000万⼈との数値が出ています。また、環境(environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮する企業に投資を行うESG投資が拡大しています。SDGsに取り組むことでこうした投資を受けやすくなり、より多くの資金の調達が可能になるのです。このように、SDGsに関する経済規模は大きく世界規模でマーケットが展開されているため、新たなビジネスチャンスとなりうるでしょう。さらに、SDGsへの取り組みをきっかけに新たな取引相手がみつかったり、新規顧客を獲得することができたりと、今までになかった事業を実現できるかもしれません。採用力の強化SDGsへの取り組みは、優秀な人材を確保するうえでも重要です。学生の約7割弱、20代転職希望者の約半数が、就職活動において企業がSDGsに取り組んでいることを知ると「志望度があがる」と答えました。(出典:株式会社学情)一方で「その中身が重要」との声もあり、取り組みの内容までしっかりと充実させることが求められています。事業継続に繋がる持続可能な社会を目指すSDGsの考え方を事業に取り入れることで、事業自体も長期的に継続していけるようになります。たとえば、先ほど紹介したイオンの「持続可能なカカオの調達」では、生産者を守ることで長期的な事業の運用を可能にしています。また、SDGsへの取り組みが他社との事業取引となる可能性もあり、こうした面でもSDGsに取り組むことは事業継続に繋がります。コスト削減企業全体で省エネルギーを推進することや、ペーパーレス化をすることなど、SDGsの取り組みをすることでコスト削減に繋がることもあります。また上で紹介したように、SDGsへの取り組みは従業員のモチベーションアップにも関わります。従業員のモチベーションを向上させることは離職率の低下にも繋がり、結果として新規人材採用や育成にかかる費用を抑えることができるのです。個人でできるSDGsの身近な例5選ここまではSDGsに関する企業の取り組みをご紹介してきましたが、個人でもできることはたくさんあります。では、具体的にどのようなことができるのか、身近な取り組みを5つご紹介します。節電・節水節電・節水は、電気や水を届けるために使われるエネルギーを削減して地球環境を保全することや、貴重な水資源を守ることに繋がります。具体的な取り組みとしては以下のようなものがあります。・テレビやパソコンを省エネモードにする・トイレの大小レバーを使い分ける・生活リズムを朝型にする・できるだけ複数人で同じ部屋を利用するこのように、生活を少し見直すだけでも節電・節水ができます。マイバッグ・マイボトルマイバッグやマイボトルを使用することで、レジ袋やペットボトルの使用量を減らし、その生産にかかる分も含めた環境への悪影響を大幅に削減することができます。実際どのぐらい使用しているかというと、日本人は年間で約300枚のレジ袋・約180本のペットボトルを消費していると言われています。個人でマイバッグやマイボトルを使用するだけで年間でこれだけの量を削減できるため、1人1つは持っているといいかもしれません。フードロス削減フードロスは、原材料を作るのにも調理するのにもエネルギーを使ったのに、さらに廃棄にもエネルギーを消費するという非常にもったいない行為です。あまり身近なことに感じないかもしれませんが、実はフードロスのうち47%、年間約247万トンの食品は家庭で捨てられています。(出典:農林水産省)買い物の前に冷蔵庫を確認して無駄な食品を買うのを防いだり、余った食品を捨てずに冷凍保存したりと、ちょっとしたひと手間でフードロスを減らしていけるといいですね。公共交通機関の利用公共交通機関は1回あたりの輸送人数が多いため、自動車に比べて環境効率がいいというメリットがあります。また公共交通機関というのは、自動車を持たない人の大切な移動手段であるほか、観光客にとっても必要なものであることから観光資源と考えることもできます。移動が困難な人を誰一人見捨てないという点や、住み続けられるまちづくりという点においても、公共交通機関はSDGsのためになくてはならないものです。長期的な運営のためにも、公共交通機関を積極的に活用していきましょう。家事の分担家での仕事をきちんと分担するだけでも、SDGsの取り組みになります。というのも、妻が家事・育児に費やす時間は約7時間半なのに対し、夫が費やす時間は約2時間と、かなりの差が出ていることが分かります。(出典:総務省)女性が家の仕事をするというジェンダー間のギャップを無くし、性別に関係なく仕事をするよう心がけるといいですね。そもそもSDGsとは?ここまでご紹介してきたSDGsの取り組みですが、SDGsとはなにか正直よくわからない、という方もいらっしゃると思います。SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年9月に国連サミットで採択された国際社会共通の目標のことです。世界全体で達成すべき17の目標を設定し、持続可能な世界の実現を目指しています。これまでにも多くの議論がなされてきましたが、そのなかでもSDGsは「誰一人取り残さない」ことを掲げているのが特徴です。また持続可能とは、「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」と定義づけられています。このように、今も未来もすべての人が満足できるようにするための世界共通の目標がSDGsだと言えます。まとめSDGsに取り組むためにはどうすればいいのか、なぜSDGsに取り組まなければならないのかを、企業例を中心に紹介してきました。企業としてSDGsに取り組むことは、企業のためだけでなく、企業に関わるすべての人、さらには世界全体のためになります。もちろん、個人としてSDGsに取り組むことも世界中の人に貢献することに繋がります。今回ご紹介した例を参考に、ぜひSDGsへの取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。
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