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【2022年SDGs達成度】ランキング上位国と日本の取り組み事例も紹介!

近年テレビ番組などでもよく見かけるようになったSDGsですが、日本ではどのような取り組みが行われているのでしょうか?そして、そもそも日本ではどのくらいの目標が達成できているのか気になりますよね。そこでこの記事では、世界のSDGs達成度ランキングを取り上げ、ランキング上位の国々の取り組みや、気になる日本の取り組み事例をご紹介します。この記事の監修者小田 勝宣(おだ かつのり)第6回SDGs検定取得。SDGsに関連したWebメディア記事執筆やブログの運営など実績多数。大学事務職員時代にSDGsに関する企画立案、運営業務に携わったことからSDGsに興味を持つ。現在はSDGs未来都市に選定された「岩手町」へ移住し、地域おこし協力隊として、地方におけるSDGsの取り組み強化に貢献している。2022年の日本は世界で19位!SDGs達成度ランキングとは?SDGs達成度ランキングとは、各国のSDGsの取り組みを100点満点で点数化し、ランキング化したものです。ランキングは、国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」が作成した「持続可能な開発報告書(Sustainable Development Report)」で発表されています。2022年度版のランキングでは、日本の順位は世界163カ国中19位、アジアでは1位でした。世界163カ国中19位と聞くと、それほど悪くはない気がしますよね。では、日本以外で上位にランクインしたのはどの国なのでしょうか?次の「達成度ランキング1〜20位」で20位までにランクインした国をご紹介します。達成度ランキング1~20位2022年度版SDGs達成度ランキング1〜20位は以下の国々です。1位 フィンランド2位 デンマーク3位 スウェーデン4位 ノルウェー5位 オーストリア6位 ドイツ7位 フランス8位 スイス9位 アイルランド10位 エストニア11位 英国12位 ポーランド13位 チェコ14位 ラトビア15位 スロベニア16位 スペイン17位 オランダ18位 ベルギー19位 日本20位 ポルトガル実は20位までにランクインしているのは、日本を除くとヨーロッパの国々だけです。このことから、ヨーロッパの国々はSDGsに高い関心を持ち、行動に移していることがわかります。とくに1〜4位に北欧の国々がランクインしたのは、北欧ではSDGsの取り組みが率先して行われているためだと考えられます。後ほど、「達成度ランキング上位の国の取り組み事例」でこれらの国々の先進的な取り組みをご紹介します。これまでの日本のランキング推移日本のランキングの推移は以下の通りです。2016年:18位2017年:11位2018年:15位2019年:15位2020年:17位2021年:18位2022年:19位日本の順位は近年下がり続けています。その理由は、いまだに多くの「深刻な課題」が残されているからです。日本が抱える「深刻な課題」について、詳しくは「日本は6つの目標に『深刻な課題』|目標別の対策事例」でご紹介します。世界全体の達成状況世界全体のSDGsの達成状況はどうなっているのでしょうか?世界各国の達成度の平均点を見てみると、2019年までは進展していたのですが、実は2020年以降は66点で停滞しているのです。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行によって経済が停滞しているため、貧困や経済成長が課題となっていたり、環境問題への取り組み具合が遅れていたりしています。また、ロシアによるウクライナ侵攻などの軍事衝突によって、安全保障やエネルギー価格の上昇なども懸念されており、さらに平和や格差問題に取り組むことが課題となるでしょう。世界全体でSDGsの達成状況が停滞しているなか、ランキング上位の国々はどのようなことに取り組んでいるのか、次にご紹介します。達成度ランキング上位の国の取り組み事例1位:フィンランド「世界一幸せな国」としても知られているフィンランドではこのような取組みが行われています。・SDGsスタートアップへの資金提供フィンランドでは、SDGsスタートアップがたくさんあります。SDGsスタートアップとは、SDGsに配慮した技術を活かそうとしている新興企業のことです。SDGsスタートアップがたくさん生まれる背景には、フィンランド政府直営の研究所「フィンランド技術研究センター(VTT)」があります。VTTが投資したり、研究機器を貸し出したりすることで、SDGsスタートアップが活発になっているのです。・レスポンシブルツーリズム(出典:Visit Finland)レスポンシブルツーリズムとは、「責任ある観光」と訳され、「観光に携わる人はその土地の環境や文化に与える影響に対して責任を持つべきだ」という考えです。国が定めた基準に則り、サステナブルな取り組みをしているホテルや旅行会社には「サステナブル・トラベル・フィンランド」という認証が与えられます。この認証があるかどうかで観光客の行動が変わるため、観光業界は環境や文化の保全に積極的に取り組んでいます。2位:デンマークデンマークは食のSDGsに力を入れています。・オーガニックフードの普及デンマークでは、オーガニックフードが学校給食でも使われるほどに広く普及しています。オーガニックフードは、強い農薬や化学肥料を使用しないため、土壌や河川に対する環境負荷が低いことが特徴です。・食品ロスの削減デンマークでは、食品ロスの削減に向けて、様々なサービスがあります。例えば、余った食品を専用のアプリからリーズナブルに提供するサービスや、他の店では廃棄される、パッケージ破損・賞味期限切れなどの食品のみを扱うスーパーがあります。3位:スウェーデン環境にも人にも優しい国を目指しているのが、スウェーデンです。・女性の社会進出のための法整備スウェーデンでは、例えば大臣の半数が女性であるなど、政治や企業の場で女性が多く活躍しています。また、育児休暇を取得した後も元の職場に復帰できるように法律に定められているため、女性の社会進出がしやすくなっています。他にも、父親のみしか使用できない育児休暇が90日分あるなど、男性の子育て支援にも国として取り組んでおり、男性の育休取得率は約8割に迫っています。(出典:内閣府)これらの取り組みにより、母親だけに任せることなく、育児をすることができる環境が整っています。・ゴミの再利用スウェーデンで出されるゴミの99%がリサイクルされたり発電に使われたりしています。ゴミがきちんと再利用されるとわかっているからこそ、積極的なゴミの分別にもつながっています。4位:ノルウェーノルウェーは環境に優しい街づくりを目指しています。・電気自動車の普及実は、ノルウェーの新車販売数に占める電気自動車の割合は2022年には79.3%にもなっています。同年の日本の1.4%と比べると、とても高い割合です。ノルウェーでは、電気自動車に対する税制上の優遇を行うなど、国として電気自動車を普及させようと取り組んでいることが、高い割合となっている理由のひとつです。(出典:ノルウェー|欧州代替燃料観測所|EU)(出典:燃料別販売台数(乗用車)|一般社団法人 日本自動車販売協会連合会)・「カーフリー」政策首都オスロでは都市部への車の出入りを制限する「カーフリー」政策が行われています。市内を走る車が少ない分、歩行者天国が多く、自転車専用レーンの整備もすすめられています。このような取り組みが評価され、オスロ市は環境改善に取り組む都市として、「欧州グリーン首都賞」を2019年に受賞しています。5位:オーストリアオーストリアは脱炭素政策が積極的に行われています。・再生可能エネルギーの使用オーストリア政府は以下の目標をかかげています。2040年までに温室効果ガス排出実質ゼロ2030年までに国内で生産される電力をすべて再生可能エネルギーで賄う実際に、全発電量のうち再生可能エネルギーが占める割合は、すでに80%近くに達しているのです。アルプス山脈やドナウ川など、水資源に恵まれているため、水力発電の割合が大きく、総発電量の60%となっています。水力発電を重視した政策が長年行われてきた結果、オーストリアは脱炭素先進国となったのです。(出典:2021年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報)|特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所)日本は3つの目標が「達成済み」|目標別の取り組み事例日本は、目標4・9・16の3つが「達成済み」とされています。これら3つの目標に関連のある、企業や団体の取り組み事例を紹介していきます。目標4「質の高い教育をみんなに」・株式会社リクルートリクルートが提供する「スタディサプリ」は、「教育環境格差の解消」をミッションに掲げています。場所や環境を選ばないオンラインでの学習サービスが広まることで、どこにいても高品質な教育を受けることができます。・SMBC 日興証券株式会社SMBC 日興証券は、各世代のニーズに応じた金融経済教育を行っています。金融経済教育の提供を通して、正しい資産形成、さらには健全な資本市場の実現に貢献していくことを目標としています。目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」・NTTインフラネット株式会社NTTインフラネットは、浸水情報をリアルタイムで知らせる浸水検知システム(GAIA FITS®︎)を提供しています。このシステムによって、現地に直接調査をしに行かなくても、浸水状況をリアルタイムで把握できるようになります。・長野県伊那市(出典:伊那市)長野県伊那市では、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しています。例えば、「ぐるっとタクシー」というサービスでは、乗合タクシーを使いたい住民が出発地と目的地を指定すると、そこまでの経路をAIが自動で計算し、配車します。この乗合タクシーが、免許証を返納し、移動手段がなくなってしまった高齢者の移動手段として生活を支えています。このほかにも、モバイルクリニックや、ドローン、自動運転等のテクノロジーを活用することで、誰もが幸福な生活を送ることができる「しあわせのまち」を目指しています。目標16「平和と公正をすべての人に」・株式会社飯島産業ユニフォームや制服の企画・製造を行う飯島産業は、「フェアトレード」に取り組んでいます。フェアトレードとは、途上国で作られる原料や製品を適正な価格で購入し、途上国に住む人の生活改善や自立を目指す公平・公正な貿易のことです。飯島産業は国際フェアトレード認証コットンを使用したユニフォームを供給しています。・日本航空株式会社(JALグループ)JALグループは2019年に「JALグループ人権方針」を制定しました。また人権への想いとして、ホームページに以下の文章を掲載しています。JALグループは、事業活動を通して、すべての人権が尊重され、安心して活躍できる社会の実現を目指しています。(出典:人権の尊重|サステナビリティ|日本航空株式会社)航空機内での人身取引の防止に努めているほか、ハラスメントや長時間労働のない職場に向けて取り組んでいます。日本は6つの目標に「深刻な課題」|目標別の対策事例「達成済み」とされた目標がある一方、以下の6つの目標は、日本が抱える「深刻な課題」とされています。これらの目標に対して、達成に向けてどのような取り組みが行われているのか、ご紹介します。目標5「ジェンダー平等を実現しよう」・エスビー食品株式会社エスビー食品は、人材の多様化を推進するために「S&Bポジティブアクション」を制定しました。その中では、労働時間の是正のために平均総実労働時間の目標が定められていたり、ジェンダー平等のために女性管理職比率や女性採用比率の改善などが定められたりしています。産休・育休取得者対象セミナーや事業所内保育園の設置など、育児と仕事の両立を支援する取り組みも多くあります。人材の多様化のために、誰もが働きやすい環境づくりを目指しているのです。(出典:組織の人材多様化推進|サステナビリティ|エスビー食品株式会社)・アクセンチュア株式会社アクセンチュアでは、ジェンダー平等を目指して、男性育休ロールモデルを社内報で取り上げたり、女性社員のキャリア意識向上のための研修をしたりしています。また、2006年に女性社員が最大限の能力を発揮して活躍できるようにするために、所属や役職を越えた組織である「Japan Women's Initiatives(JWI)」が発足しました。これらの取り組みの結果、2021年に日経WOMAN「女性が活躍する会社Best100」で総合1位を受賞しました。(出典:平等の文化のある職場環境を目指して|インクルージョン&ダイバーシティ|アクセンチュア株式会社)目標12「つくる責任 つかう責任」・株式会社ファーストリテイリングユニクロなどを運営するファーストリテイリンググループは、「服のチカラを、社会のチカラに。」をビジョンに、商品のリユース・リサイクル活動をしています。まだ着られる服は世界の難民・国内避難民などへ寄贈しています。着られなくなった服は、新しい服の原材料や、固形燃料などの産業用資材にリサイクルしています。(出典:サステナビリティ|株式会社ファーストリテイリング)・株式会社コークッキング株式会社コークッキングが運営するTABETEは、飲食店で余ってしまった食品を消費者である「食べ手」につなげるサービスです。売れ残りの食品は廃棄されることが多いですが、TABETEで呼びかけて買ってもらうことで、食品ロスを減らせます。TABETEでは値引きをしている飲食店もあるので、消費者もお得に食べられます。つくる側もつかう側もメリットを感じながら、SDGsに貢献できるサービスです。目標13「気候変動に具体的な対策を」・パナソニック ホールディングス株式会社(出典:パナソニックホールディングス株式会社)パナソニックは、2050年までに「創るエネルギー」が「使うエネルギー」を超えることを目標にしています。具体的には、脱炭素エネルギーの普及のため、3種類の電池を組み合わせた自家発電の実証に取り組んでいます。また使うエネルギーの削減のため、商品の省エネ性能の向上にも取り組んでいます。・ダイキン工業株式会社ダイキン工業は、オゾン層の破壊や地球温暖化を防ぐために、次世代冷媒の実用化を推進しています。冷媒とは、エアコンや冷蔵庫などに使われている、熱を運ぶガスです。かつて使われていた「HCFC」や「HFC」という冷媒はオゾン層の破壊や地球温暖化の原因になっていました。ダイキン工業はこれらの代わりに低温暖化冷媒である「R32」を採用し、地球温暖化防止に取り組んでいます。目標14「海の豊かさを守ろう」・株式会社商船三井商船三井は海洋汚染防止のため、船舶の廃棄物や不要な油を船内で分別・処理しています。またプラスチックごみを陸に持ち帰ることを徹底しており、海中のマイクロプラスチック(微小なプラスチック粒子)も、船舶に装置を搭載して回収しています。・シャボン玉石けん株式会社シャボン玉石けんは、企業理念として「健康な体ときれいな水を守る」を掲げており、無添加せっけんを製造しています。一般的な石けんには、合成界面活性剤や香料・着色料などの添加物が入っていることが多いです。しかし同社の無添加石けんは、排水として海や川に流れ出ても、微生物や魚のエサになる環境にやさしい石けんです。目標15「陸の豊かさも守ろう」・住友林業株式会社(出典:住友林業株式会社)住友林業は、高層建築への木材活用に取り組んでいます。実は国産材の供給量は、木の年間成長量の20〜25%に留まっており、森林資源の余剰分が年々増加しています。同社は、高さ350mの木造超高層建築物を2041年に実現する「構想W350計画」を2018年にまとめました。この計画では、同社の木造住宅の約8,000棟分に相当する、185,000㎥もの木材を使用します。木材を適切な量だけ使うことで、森林の状態をよくすることができます。そのためには、木材を高層建築にも活用していくことが求められています。(出典:街を森にかえる環境木化都市の実現へ木造超高層建築の開発構想W350計画始動|住友林業株式会社)・株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所ソニーコンピュータサイエンス研究所は、砂漠化が進んだ土地を回復させ、農地にする取り組みをしています。この取り組みでは、種と苗以外一切持ち込まず、植物の特性を生かして生態系をつくっていく「協生農法」という方法を実践しています。2015年から、アフリカのブルキナファソにある砂漠化した土地で協生農法を導入したところ、1年間で砂漠化を逆転させ、森林生態系の回復に成功しました。目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」・博報堂DYグループ×JANIC博報堂DYグループとJANIC(特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター)は、身の回りにあるお願いにSDGsに関する「ひとこと」を加えた、「ひとこと多い張り紙」を作成しました。例えば、目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を題材にした張り紙には、「電気の使えない生活に想いを馳せながら 退室時には消灯してください」というメッセージが書かれています。(出典:ひとこと多い張り紙|SDGs理解促進ツール|JANIC)「ひとこと多い張り紙」は、SDGs理解促進ツールとして利用してもらえるように、JANICのホームページにて無償で公開されています。・ヤマハ株式会社ヤマハは、器楽演奏体験を提供する「スクールプロジェクト」をインドで実施しています。インドは人口が多く市場としても大きいですが、実は公教育のカリキュラムに音楽教育がありません。同社はプロジェクトを通して、インドの子どもたちが音楽にたくさん触れられるように取り組んでいます。SDGs活動に興味がある方は「Socialgoo」がおすすめSDGsに関する活動をもっと知りたいという方におすすめな「Socialgoo(ソシャグ)」。ソーシャルグッド(社会にとって良いサービスや活動)に特化したメディアであり、プロボノやSDGsへの取り組み事例など様々な情報を掲載中です。ぜひ会員登録をして他の記事もチェックしてみてくださいね!まとめ日本のSDGs達成度ランキングは19位でした。ランキング上位の国では、政府・企業・国民が力を合わせている取り組みが多く、皆で手を取り合って達成を目指すことが大切と言えそうです。また取り組みに直接参加しなくても、SDGsに取り組んでいる企業・団体の商品やサービスを積極的に選ぶことでも、SDGsに貢献できます。より多くの方がSDGsに関心をもち、購入や参加によってSDGsに取り組むことが、達成度ランキングの順位を上げるためには必要そうです。

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世界のSDGs取り組み事例5選!達成度ランキングTOP10の国々もご紹介

国際社会で共通の目標とされているSDGsですが、世界ではどのような取り組みがなされているかご存知ですか?2015年にSDGsが採択されてから、これまで多くの国が独自の方法でSDGs達成に向けて取り組んできました。そうした取り組みを評価するために、世界193か国を対象としたSDGsの達成度ランキングも存在します。そこで本記事では、世界で行われている取り組み事例と、SDGs達成度ランキング上位10国について解説していきます。この記事の監修者小田 勝宣(おだ かつのり)第6回SDGs検定取得。SDGsに関連したWebメディア記事執筆やブログの運営など実績多数。大学事務職員時代にSDGsに関する企画立案、運営業務に携わったことからSDGsに興味を持つ。現在はSDGs未来都市に選定された「岩手町」へ移住し、地域おこし協力隊として、地方におけるSDGsの取り組み強化に貢献している。世界のSDGs取り組み事例5選ここでは、具体的に世界でどのような取り組みがなされているのかを、5つの国を例に紹介します。フィンランドの取り組み事例フィンランドは、最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーのシェアを、2030年までに51%に引き上げる目標を掲げています。また、フィンランドには「ネウボラ」という育児支援制度があります。母子ワクチンがすべて無料になったり、いつでも子育てに関して助言を受けられたりと、母親が安心して子育てできる環境づくりに貢献しています。デンマークの取り組み事例(出典:SWECO)デンマークでは「UN17 Village」という取り組みが行われています。これは、17の目標をすべて達成できるようなビレッジ(村)を建設するというものです。リサイクル建材で建設され、水道や電気も100%再生可能エネルギーを使用、居住する住人も健康で多様性に富んだ生活が出来るよう考慮されています。2023年にコペンハーゲンに完成予定で、35000平方メートルの広大な敷地に800人以上が暮らせるようになる見込みです。スウェーデンの取り組み事例スウェーデンではゴミを100種類にも分別し、徹底的なリサイクルが行われています。その結果として、ゴミの約99%をリサイクル、またはエネルギー源として再利用するのに成功しました。またスウェーデン政府は、行政機関や国営企業に対してSDGsへの取り組みを報告するよう義務化しています。報告の義務化によって各機関の意識も高まり、大きな成果に繋がっています。ノルウェーの取り組み事例ノルウェーは、国内で使用する電力の約90%以上を水力発電でまかなっています。豊富な水と険しい山々という土地の特性をうまく活用した取り組みです。さらにノルウェーは、EV車の普及率が世界一です。EV車への税制度を優遇することによって消費者の需要が高まり、多くの人が利用するようになりました。オーストリアの取り組み事例オーストリアでは、生分解性以外のプラスチック袋の使用自体が法律で禁止されています。生分解性プラスチックとは、分解されて自然に還りやすいプラスチックのことです。またオーストリアでは、国だけでなく州や地域レベルで取り組みが推進されており、国民一人一人の意識が高いといえます。世界のSDGs達成度ランキングTOP10ここまでは海外の国の取り組み事例をご紹介してきましたが、なぜこの国々を例に挙げたのか疑問に思った方もいるかと思います。それは、世界的に見てもこの5か国が優秀な成果をあげているからなんです。2022年6月2日に公開された Sustainable Development Report 2022(持続可能な開発レポート)での達成度ランキング上位10か国を見てみましょう。1位:フィンランド2位:デンマーク3位:スウェーデン4位:ノルウェー5位:オーストリア6位:ドイツ7位:フランス8位:スイス9位:アイルランド10位:エストニアご覧の通り、上記で取り組み事例をご紹介した5か国は達成度ランキングのTOP5となっています。達成度の高いこれらの国も参考にしながら、さらにSDGsへの取り組みが進むといいですね。またTOP10の国に注目すると、上位10か国はすべてヨーロッパの国であり、ヨーロッパ全体としてSDGsへの意識が高いと分かります。ただしヨーロッパ各国でも、「12.つくる責任 つかう責任」「13.気候変動に具体的な対策を」などの項目では未達成な目標も多く、項目ごとで達成度に差があるといえます。経済成長と環境保護の両立への努力がまだまだ必要だといえそうです。日本のSDGs達成度順位は?この達成度ランキングでの日本の順位は19位で、2021年度のランキング18位から、1つ順位を落とす結果となりました。「4.質の高い教育をみんなに」「16.平和と公正をすべての人に」の項目では評価が高いものの、ヨーロッパと同じく環境保護に関する項目で伸び悩んでいます。加えて「5.ジェンダー平等を実現しよう」という項目が低迷しているのが特徴です。アジア全体としてもこの項目が低い傾向にあり、環境保護と同時にジェンダー間の格差についても是正していく必要があるといえます。海外企業のSDGs取り組み事例3選ここからは具体的に、海外の企業がどんなことに取り組んでいるかの事例を3社取り上げてご紹介します。自社で取り組むときの参考にしてみてはいかがでしょうか。Apple(出典:Apple)アップルは、製品に再生可能な素材を使用したり、リサイクルしやすい製品デザインを採用したりと可能な限りエネルギー効率が高い生産を目指しています。加えて再生可能エネルギーだけで企業運営していく目標を掲げ、二酸化炭素を減らすための取り組みといった様々な地球保護活動に投資も行っています。自社製品の工夫だけでなく、運営するためにかかるエネルギーを見直したり社外の取り組みに投資をしたりと、幅広い分野でSDGsに貢献している企業です。LEGO(出典:LEGO)デンマークの玩具メーカーであるLEGOは、2030年までにレゴブロックの材料全てを持続可能な資源からできたプラスチックに変えることを目標にしています。また、製品の内袋に使われるビニール袋もリサイクル可能な紙袋に変えるという方針も示しています。このように、素材を見直して環境にやさしいものに変えていくという取り組みを行っているのが特徴です。BMW(出典: BMW)ドイツの自動車メーカーBMWは、100%の再生資源使用率と100%のリサイクルを目標としています。そのための取り組みとして使用している素材は以下の通りです。・漁網をリサイクルした素材・サボテンから作られた繊維・100%再生プラスチック などこのほかに自動車メーカーという枠を超えて、生物多様性を守るためのミツバチの養蜂にも取り組んでいます。SDGsの達成期限である2030年までの課題ここまで海外での取り組み事例について解説してきました。SDGsは達成期限を2030年としていますが、これまでの取り組みを通して「できたこと」と「できなかったこと」の差が浮き彫りになってきたのがわかります。上でも述べたように、環境保護に関する項目で特に「13.気候変動に具体的な対策を」はほとんどの国で達成できていません。2030年の期限まで折り返し地点を過ぎた今、すべての国で「本当に具体的な」対策を打ち出すことが課題となってきます。まとめSDGsに関する海外の取り組み事例を解説し、今後の課題について考えてきました。これからは世界の国々全体でそれぞれの取り組みを評価し、「できたこと」は積極的に取り入れ、「できなかったこと」への対策を立てていくことが求められます。今回の記事をきっかけに、海外で行われている取り組みにも興味を持ち、自社の取り組みや自分の行動に取り入れてみるのはいかがでしょうか。

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企業のSDGs取り組み事例10選|個人でできる身近な例もご紹介

近ごろよく耳にするようになったSDGsという言葉。しかし、実際にSDGsに取り組みたいが具体的に何をすればいいかわからない、という方もいらっしゃると思います。そこで本記事では、SDGsに関する企業の活動例や個人でもできる取り組みをご紹介します。この記事の監修者小田 勝宣(おだ かつのり)第6回SDGs検定取得。SDGsに関連したWebメディア記事執筆やブログの運営など実績多数。大学事務職員時代にSDGsに関する企画立案、運営業務に携わったことからSDGsに興味を持つ。現在はSDGs未来都市に選定された「岩手町」へ移住し、地域おこし協力隊として、地方におけるSDGsの取り組み強化に貢献している。企業によるSDGsの取り組み事例10選ここでは、食品・自動車・報道関連などといった幅広い分野から、10の企業の取り組みをピックアップしてご紹介します。TBS:地球を笑顔にするWEEK(画像:地球を笑顔にするWEEK|TBSテレビ)TBSが2022年10月31日〜11月6日に行った「地球を笑顔にするWEEK」は、SDGsにまつわる発信を重点的に行うプロジェクト。ニュースやバラエティなど様々な番組でSDGsを取り上げることで、より身近に感じ、楽しく実践してもらおうという取り組みです。またテレビだけではなく、ラジオ・YouTube・Twitterなどでも積極的に情報発信をしていました。くら寿司:お寿司で学ぶSDGs(画像:出張授業 お寿司で学ぶSDGs|くら寿司|回転寿司)くら寿司は、回転寿司を通して水産業や食について考える、小学生向けの出張授業を提供しています。子供たちが体験型の授業を通して現状の問題点を学び、それをどう解決するかまで考えていくという内容です。将来を担う子供たちがSDGsについて考える機会にもなるほか、一緒に参加する親御さんに企業が行う別の取り組みを知ってもらう機会にもなっています。ハウス食品:みんなでエコにチャレンジ(画像:みんなでエコにチャレンジ | Come on House(カモンハウス) | ハウス食品グループ本社の会員サイト)マロニーちゃんでおなじみのハウス食品は、食に関連して親子で一緒に取り組めるエコな活動事例を紹介しています。普段の食卓で残さず食べることの大切さや、賞味期限とは何かについてなど、子供でも実践できるような取り組みを丁寧に解説しているのが特徴です。親子で一緒に考える機会を提供することで、身近なところからのSDGsの実践を促進しています。江崎グリコ:植物生まれのプッチンプリン(画像:植物生まれのプッチンプリン | 商品ラインアップ|プッチンプリン | グリコ)食品メーカーのグリコは、卵や乳などの動物性原料を使わず、植物性原料のみで製造された「植物生まれのプッチンプリン」を販売しています。動物性原料を使用しないことで、卵・乳アレルギーの人や動物性原料を避けている人でもプリンを食べられるようになりました。また、2022年に千葉県流山市立新川小学校で、この容器を文房具にリサイクルするという体験型の出張授業が行われました。資生堂:持続可能なパッケージ開発化粧品メーカーである資生堂は、独自の容器包装開発ポリシーを制定し、持続可能な容器の開発を進めています。容器の適正化や軽量化・容器に使う素材の吟味、「つけかえ・つめかえ」を促すデザインの設計などを行い、プラスチック使用量の軽減をめざす取り組みです。くわえて、空き容器のリサイクルや環境への影響を最小限にする原材料調達など、社外との関わりにおける取り組みにも力を入れています。イオン:持続可能なカカオの調達(画像:フェアトレード認証 | 環境への取り組み - イオンのプライベートブランド TOPVALU(トップバリュ))イオンは2030年までに、自社で使用するカカオすべてを持続可能であると裏付けがとれたものへ変更するという目標を掲げています。カカオ生産の多くはアフリカの発展途上国が占めていますが、安価な取引で生産者が収入を得られず、苦しい生活を強いられているのが現状です。そこで公正な価格で取引するフェアトレードを推進することで、生産者やその国の人々の生活が守られ、長期的な事業の運用に繋がります。キリン:スリランカにおける紅茶農園支援(画像:スリランカにおける紅茶農園支援 | 原料生産地と事業展開地域におけるコミュニティの持続的な発展 |キリンホールディングス)大手飲料メーカーのキリンは、スリランカの紅茶農園が持続可能な農園認証を取得するための支援と、農園の子供たちが通う学校に書籍を寄贈する活動を行っています。2020年には、持続可能な農園認証制度「レインフォレスト・アライアンス認証」を受けたスリランカの農園のうち、約30%がキリンの支援によって認証されました。また、書籍はすでに200校に寄贈され、子供たちの教育水準向上と農園の安定した運営に貢献することが期待されています。トヨタ:トヨタの森(画像:トヨタ | トヨタの森)トヨタは、多様な生物の暮らす里山環境を整備し、森の継続的な調査や自然を楽しく学ぶ教育活動を行っています。トヨタの森には動物400種以上・植物450種以上が生息し、中には絶滅危惧種に指定されている珍しい種も生息するなど、生物多様性の保全に貢献しています。さらに、多くの体験プログラムが用意されており、森に訪れる人が自然をより身近に感じられるような工夫もなされています。アクセンチュア:ジェンダーダイバーシティ大手コンサルティング会社のアクセンチュアは、「平等で多様性を受け入れる企業文化」を目指した様々な取り組みを行っています。中でもジェンダーバランスの取れた職場環境の構築に力を入れ、現在では27万人以上の女性が活躍しています。2021年には日経WOMAN「女性が活躍する会社Best100」で総合1位を受賞しており、この先2025年までに、社員の男女比を1:1にすることも目指しています。ソフトバンク:ダイバーシティの推進ソフトバンクは、多様な人材が個々の能力を発揮できる環境の整備に取り組み、公正な評価に基づく役職や処遇の決定を行っています。女性の活躍推進はもちろん、障がい者採用やLGBTQに関する取り組みなどを通して、会社全体としてダイバーシティの推進を目指しています。結果として女性活躍に関する取り組みが優良な企業と認定され、PRIDE指標(LGBTQに関する取り組みの評価指標)における最高位を2017年から6年連続で受賞しています。なぜ企業はSDGsに取り組むべきなのかここまで各企業の取り組みをご紹介してきましたが、そもそも企業がSDGsに取り組むのはなぜなのでしょうか。ここからは、企業がSDGsに取り組むべき理由を5つご紹介します。企業価値・企業イメージの向上企業の社会的責任(CSR)が求められている今、SDGsに取り組むことは、企業イメージを大きく向上させてくれます。世間の約7割の人が、企業の「SDGs」に対する取り組みを知るとその企業の好感度が上がると回答しました。(出典:カウネット)またSDGsに取り組むことで、上で紹介したアクセンチュアやソフトバンクのように労働環境が整備され、従業員のモチベーションアップにも繋がります。くわえて、SDGsに注力する企業に対して取り組みの効果を尋ねた調査では、企業イメージの向上が37%で最も多く、次いで従業員のモチベーションの向上が31%でした。(出典:帝国データバンク)このように、SDGsへの取り組みは企業価値を高める効果があります。ビジネスチャンスに繋がる環境省によると、SDGs によってもたらされる市場機会の価値は年間12兆ドル、2030年までに世界で創出される雇⽤は約3億8000万⼈との数値が出ています。また、環境(environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮する企業に投資を行うESG投資が拡大しています。SDGsに取り組むことでこうした投資を受けやすくなり、より多くの資金の調達が可能になるのです。このように、SDGsに関する経済規模は大きく世界規模でマーケットが展開されているため、新たなビジネスチャンスとなりうるでしょう。さらに、SDGsへの取り組みをきっかけに新たな取引相手がみつかったり、新規顧客を獲得することができたりと、今までになかった事業を実現できるかもしれません。採用力の強化SDGsへの取り組みは、優秀な人材を確保するうえでも重要です。学生の約7割弱、20代転職希望者の約半数が、就職活動において企業がSDGsに取り組んでいることを知ると「志望度があがる」と答えました。(出典:株式会社学情)一方で「その中身が重要」との声もあり、取り組みの内容までしっかりと充実させることが求められています。事業継続に繋がる持続可能な社会を目指すSDGsの考え方を事業に取り入れることで、事業自体も長期的に継続していけるようになります。たとえば、先ほど紹介したイオンの「持続可能なカカオの調達」では、生産者を守ることで長期的な事業の運用を可能にしています。また、SDGsへの取り組みが他社との事業取引となる可能性もあり、こうした面でもSDGsに取り組むことは事業継続に繋がります。コスト削減企業全体で省エネルギーを推進することや、ペーパーレス化をすることなど、SDGsの取り組みをすることでコスト削減に繋がることもあります。また上で紹介したように、SDGsへの取り組みは従業員のモチベーションアップにも関わります。従業員のモチベーションを向上させることは離職率の低下にも繋がり、結果として新規人材採用や育成にかかる費用を抑えることができるのです。個人でできるSDGsの身近な例5選ここまではSDGsに関する企業の取り組みをご紹介してきましたが、個人でもできることはたくさんあります。では、具体的にどのようなことができるのか、身近な取り組みを5つご紹介します。節電・節水節電・節水は、電気や水を届けるために使われるエネルギーを削減して地球環境を保全することや、貴重な水資源を守ることに繋がります。具体的な取り組みとしては以下のようなものがあります。・テレビやパソコンを省エネモードにする・トイレの大小レバーを使い分ける・生活リズムを朝型にする・できるだけ複数人で同じ部屋を利用するこのように、生活を少し見直すだけでも節電・節水ができます。マイバッグ・マイボトルマイバッグやマイボトルを使用することで、レジ袋やペットボトルの使用量を減らし、その生産にかかる分も含めた環境への悪影響を大幅に削減することができます。実際どのぐらい使用しているかというと、日本人は年間で約300枚のレジ袋・約180本のペットボトルを消費していると言われています。個人でマイバッグやマイボトルを使用するだけで年間でこれだけの量を削減できるため、1人1つは持っているといいかもしれません。フードロス削減フードロスは、原材料を作るのにも調理するのにもエネルギーを使ったのに、さらに廃棄にもエネルギーを消費するという非常にもったいない行為です。あまり身近なことに感じないかもしれませんが、実はフードロスのうち47%、年間約247万トンの食品は家庭で捨てられています。(出典:農林水産省)買い物の前に冷蔵庫を確認して無駄な食品を買うのを防いだり、余った食品を捨てずに冷凍保存したりと、ちょっとしたひと手間でフードロスを減らしていけるといいですね。公共交通機関の利用公共交通機関は1回あたりの輸送人数が多いため、自動車に比べて環境効率がいいというメリットがあります。また公共交通機関というのは、自動車を持たない人の大切な移動手段であるほか、観光客にとっても必要なものであることから観光資源と考えることもできます。移動が困難な人を誰一人見捨てないという点や、住み続けられるまちづくりという点においても、公共交通機関はSDGsのためになくてはならないものです。長期的な運営のためにも、公共交通機関を積極的に活用していきましょう。家事の分担家での仕事をきちんと分担するだけでも、SDGsの取り組みになります。というのも、妻が家事・育児に費やす時間は約7時間半なのに対し、夫が費やす時間は約2時間と、かなりの差が出ていることが分かります。(出典:総務省)女性が家の仕事をするというジェンダー間のギャップを無くし、性別に関係なく仕事をするよう心がけるといいですね。そもそもSDGsとは?ここまでご紹介してきたSDGsの取り組みですが、SDGsとはなにか正直よくわからない、という方もいらっしゃると思います。SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年9月に国連サミットで採択された国際社会共通の目標のことです。世界全体で達成すべき17の目標を設定し、持続可能な世界の実現を目指しています。これまでにも多くの議論がなされてきましたが、そのなかでもSDGsは「誰一人取り残さない」ことを掲げているのが特徴です。また持続可能とは、「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」と定義づけられています。このように、今も未来もすべての人が満足できるようにするための世界共通の目標がSDGsだと言えます。まとめSDGsに取り組むためにはどうすればいいのか、なぜSDGsに取り組まなければならないのかを、企業例を中心に紹介してきました。企業としてSDGsに取り組むことは、企業のためだけでなく、企業に関わるすべての人、さらには世界全体のためになります。もちろん、個人としてSDGsに取り組むことも世界中の人に貢献することに繋がります。今回ご紹介した例を参考に、ぜひSDGsへの取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。

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