SDGs(持続可能な開発目標)は、国際的な枠組みであり、持続可能な世界を実現するためのガイドラインです。SDGsには、貧困撲滅・教育の普及・クリーンエネルギーの推進など、17の具体的な目標が含まれています。しかし、SDGsにはいくつかの問題点が存在します。例えば、コストがかかるものがある・国や地域の状況を反映できていない、などが挙げられるのです。この記事では、SDGsの問題点とその解決策について探ります。この記事の監修者小田 勝宣(おだ かつのり)第6回SDGs検定取得。SDGsに関連したWebメディア記事執筆やブログの運営など実績多数。大学事務職員時代にSDGsに関する企画立案、運営業務に携わったことからSDGsに興味を持つ。現在はSDGs未来都市に選定された「岩手町」へ移住し、地域おこし協力隊として、地方におけるSDGsの取り組み強化に貢献している。SDGsとはSDGs(持続可能な開発目標)とは、世界の取り組みであり、経済・社会・環境の課題に対処し、持続可能な未来を実現するための具体的な目標を設定しています。SDGsについてもっと知りたい方は以下の記事も読んでみてくださいね。SDGsをわかりやすく解説!17の目標の意味を簡単にまとめるSDGsの問題点とは?SDGsには、いくつかの問題点が存在します。例えば、目標のスケールが壮大である・数値目標が定められていないものがある・国や地域の状況が反映できていないなどが挙げられます。これらの問題点によって、SDGsへの取り組み方が不明確になる可能性があります。そこで、問題点を理解し、SDGsを促進するための解決策を見つける必要があります。ここからは、SDGsの問題点について詳しくご説明します。目標のスケールが壮大であるSDGsの問題点として、目標のスケールが壮大であることが挙げられます。例えば、目標2「飢餓をゼロに」・目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」・目標13「気候変動に具体的な対策を」などがあります。これらの目標は、スケールが壮大であり、個人や企業では取り組みにくいという課題があります。数値目標が定められていない目標があるSDGsには、数値目標が定められていない目標があるという問題もあります。以下に具体例を挙げながら、説明します。例えば、目標4「質の高い教育をみんなに」は重要な目標ですが、具体的な数値目標が欠けています。どのような基準で「質の高い教育」と定義し、どのような指標で測定するのかが明確にされていません。このため、教育の質を測るための一貫した評価や比較が困難になります。同様に、目標11「住み続けられるまちづくりを」も数値目標がありません。都市の持続可能性や住みやすさは主観的な要素も含んでおり、そもそも数値化が難しいという課題があります。目標の達成度を評価するためには、明確な数値目標や指標が必要ですが、現状ではその基準が不明確です。このように、SDGsの数値目標が欠けていることで、目標の進捗状況の評価や比較が困難になる可能性があります。各目標に取り組むためには、明確な基準や指標の設定、統一的なデータ収集方法の確立などが求められます。コストがかかるSDGsの目標のなかには、必要な投資や資金調達が膨大であり、コストがかかるものがあります。以下に具体例を挙げながら、SDGsへの取り組みに伴うコストの問題点を説明します。例えば、目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」では、クリーンで持続可能なエネルギーへの移行が求められます。しかし、再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率の向上には高額な投資が必要です。とくに途上国や貧困地域では、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーへのアクセスのためのコスト負担が大きく、実現が困難といえます。同様に、目標4「質の高い教育をみんなに」では、教育の普及や質の向上が目標とされています。しかし、教育施設の整備や教師の育成、教育資源の提供には膨大な費用がかかります。とくに経済的に困難な地域では、社会的弱者が教育を受けやすくする環境づくりには、資金面での課題が存在します。このように、SDGsへの取り組みには多額のコストが伴うため、資金調達や財源の確保が重要な課題となります。SDGsの目標を達成するためには、政府・国際機関・民間企業・市民社会など、複数の関係者が協力して資金を提供する必要があります。また、コストがかかるという課題に対処するために、資金調達の多様化や効果的な資金の使途確保が求められます。国や地域の違いが反映されていないSDGsは、世界共通の目標や指標を採用しており、地域の特性や課題に十分に対応できていないという問題があります。以下に具体例を挙げながら、説明します。例えば、目標8「働きがいも経済成長も」では、働きがいの向上と持続的な経済成長を目指しています。しかし、各国や地域の経済的な状況や労働市場の特性は異なるため、同じ目標を設定することは適切ではありません。地域の特性に合わせた目標設定をすることが必要です。同様に、目標11「住み続けられるまちづくりを」も地域の違いを反映できていないという問題があります。都市の発展や住環境の改善には、地域の特性や文化、人口密度などの要素を考慮する必要があります。しかし、SDGsでは、地域ごとの違いを十分に考慮していないと指摘されています。このように、SDGsは国や地域の違いを反映できていないという問題があります。地域ごとに異なる社会経済的な課題や環境の状況に対応するためには、各国が、地域固有の目標や指標を設定し、適切なアクションプランを策定する必要があり、負担が大きくなります。SDGsウォッシュにつながりやすいSDGsが世界的に掲げられたことで、新たにSDGsウォッシュという問題が起きています。SDGsウォッシュとは、企業や組織が、実態が伴っていないのに、SDGsへの取り組みを行っているように見せかけることです。企業の単なるイメージアップなどPRのために、企業や組織がSDGsを掲げることがあります。SDGsウォッシュの問題は、持続可能性への誠実な取り組みや実際の成果の評価を困難にします。企業や組織がSDGsに関連する取り組みを行う際には、透明性と説明責任が重要です。具体的な行動計画や成果の報告、第三者による独立した検証などが求められます。どのように解決する?SDGsには、ここまで述べてきたように、以下のような問題点があります。目標が壮大である数値目標が設定されていない目標があるコストがかかるSDGsウォッシュに繋がる国や地域の違いが反映されていないそこで、これらの問題に対して適切な解決策を見つけることが重要です。ここからは、SDGsの問題点に対する具体的な解決策を提案します。目標を具体化するSDGsの問題点へのアプローチの一つは、「目標を具体化する」ことです。具体的な目標設定は、SDGsの目標達成に向けた戦略的な行動計画や評価の基準を明確化し、進捗を把握するための重要な手段となります。例えば、目標7(エネルギーをみんなに、そしてクリーンに)の具体化には、再生可能エネルギーの割合を〇〇%増やす・エネルギー効率を〇〇%向上させるなどの具体的な目標を設定できます。これにより、各国や関係者が目標に向けた具体的な施策や投資を計画し、進捗を評価する際の基準となります。国や地域に合わせた目標にするさらに、国や地域に合わせた目標設定が重要です。SDGsは普遍的な目標を掲げているため、地域ごとの特性や課題を考慮した具体的な目標設定が求められます。それぞれの国や地域は独自の社会経済的な状況や環境の課題を抱えており、それに応じた目標設定が必要です。例えば、目標3(すべての人に健康と福祉を)では、健康や福祉へのアクセスに障害がないことを目指しています。しかし、各国や地域は異なる健康課題や保健システムの現状を抱えています。このため、国ごとに特定の健康問題に焦点を当てた目標設定を行うことが必要です。これにより、国や地域がそれぞれの優先事項に沿った健康政策や施策を実施し、健康格差の縮小や疾病予防に向けた具体的な取り組みをすることが可能となります。地域に合わせた目標設定は、関係者の関与と協力を促進する上でも重要です。このように国や地域が現状に合った目標設定をすることで、取り組みの方向性を共有し、地域の特性や課題に即した戦略的な取り組みを実施できます。SDGsへの理解を深める3つ目に、SDGsへの理解を深めることが重要です。SDGsに対する理解度が低い場合、目標達成に向けた具体的な行動が実行できない可能性があります。SDGsへの理解を深めることは、関係者の取り組みをより効果的にする上でも重要です。組織や企業・政府・市民社会など、関係者はSDGsの目標や原則を理解し、それに基づき、SDGsを達成するための具体的な戦略や施策を策定する必要があります。SDGsへの深い理解は、取り組みの方向性や優先事項の明確化に役立ちます。共通の目標を理解し、その重要性を共有することで、異なる分野での連携やパートナーシップが築かれます。SDGsへの理解が深まることで、関係者はより効果的な協力体制を構築し、持続可能な未来の実現に向けた取り組みを加速できます。SDGsへの理解を深めるためには、情報の提供や教育、意識啓発活動が重要です。関係者に対してSDGsの意義や目標の具体的な内容を伝えることで、理解度を向上させられます。例えば、企業や学校などの各コミュニティで研修を実施することが挙げられます。さらに、個人レベルでは、ワークショップなどに積極的に参加することが効果的です。問題点を解決している取り組み事例をご紹介!SDGsの問題点を解決するためには、具体的な取り組みが求められます。そこで、世界中で様々な国や企業がSDGsの問題点の解決に積極的に取り組んでいます。ここからは、問題点を解決できている取り組み事例を、国と企業に分けてご紹介します。まずは、国をご紹介します。国フィンランドフィンランドの首都ヘルシンキ市では、飲食店や商業施設に対して環境への配慮や社会的責任の取り組みを評価し、スコア化する「Think Sustainably」というシステムを導入しています。このThink Sustainablyでは、観光客や市民向けにサステイナブルな取り組みを実施しているレストラン、ショッピング、宿泊施設などの情報を見ることができます。この取り組みは、ヘルシンキの飲食店や商業施設がより環境に配慮した運営を行うことを促し、持続可能な開発への取り組みをすることにつながります。このシステムは、SDGsへの取り組みを推進する上で優れた事例とされています。これにより、市民や企業の持続可能な選択を促進し、環境や社会への影響を最小限に抑えることが可能になります。スウェーデンスウェーデンは、グローバル開発において重要な役割を果たすために、Swedish Policy for Global Developmentを策定しました。この政策は、スウェーデンがSDGsの実現に向けて取り組む方針と行動を明確化するために作られました。この政策では、スウェーデンの政府、民間企業、市民社会が協力し、国内外での取り組みを推進しています。スウェーデンは、ODA(政府開発援助)の増額や開発途上国とのパートナーシップの強化、持続可能なビジネスモデルの促進など、さまざまな手段を通じてグローバル開発に貢献しています。Swedish Policy for Global Development では、具体的な目標や戦略を策定し、スウェーデンは開発途上国の教育、健康、ジェンダー平等、持続可能なエネルギーなどの領域において積極的な支援を行っています。このように、スウェーデンでは国内外でのグローバル開発に取り組む姿勢と方針を明確化し、持続可能な未来の実現に向けた具体的な行動を推進しています。この政策に基づき、スウェーデンは国際的な協力やパートナーシップを通じて持続可能な開発の実現に貢献しています。次に、日本の企業の取り組みをご紹介します。企業日立製作所日立製作所は、SDGsへの取り組みを推進するためにオンライン研修プログラムを展開しています。このプログラムは、従業員がSDGsの重要性を理解し、ビジネス活動においてSDGsの実現に積極的に貢献できるようにサポートすることを目的としています。日立製作所のSDGsオンライン研修では、従業員に対してSDGsの基本的な概念や背景についての知識を提供します。また、各SDGs目標に関する具体的な事例や取り組みについても学習することができます。これにより、従業員はSDGsの目標や意義を深く理解し、日立製作所がSDGsに向けた取り組みをどのように推進しているかを把握することができます。加えて、従業員は、学んだ知識やスキルを日常業務に活かすことで、持続可能な社会の実現に向けた貢献を実現することができます。サントリーサントリーは、自社の事業活動がSDGsに貢献するための数値目標を設定しています。例えば、サントリーは2030年までに温室効果ガス排出量を50%削減するという具体的な目標を掲げています。具体的な数値目標を設定することで、サントリーが持続可能性の実現に向けた取り組みを透明化し、継続的な改善を追求することに繋がっています。サントリーは進捗状況を定期的に報告し、持続可能性に関する情報を広く共有し、顧客との信頼関係を構築しています。具体的な数値目標の設定と取り組みにより、サントリーは環境保護や社会的な課題の解決に向けた努力を積極的に推進しています。サントリーのように具体的な数値目標を設定することによって、SDGsに取り組みやすくなります。まとめSDGsには、目標のスケールが壮大である・各地域の現状を反映できていない、などの課題があります。しかし、国や企業は具体的な数値目標を設定することや重複を避ける取り組みを行うことで解決に取り組んでいます。私たちは、SDGsの問題点を理解した上で、持続可能な未来を築くたSDGsに取り組むことが重要です。
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