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SDGsの問題点を徹底解説!国や企業の取り組み事例もご紹介!

SDGs(持続可能な開発目標)は、国際的な枠組みであり、持続可能な世界を実現するためのガイドラインです。SDGsには、貧困撲滅・教育の普及・クリーンエネルギーの推進など、17の具体的な目標が含まれています。しかし、SDGsにはいくつかの問題点が存在します。例えば、コストがかかるものがある・国や地域の状況を反映できていない、などが挙げられるのです。この記事では、SDGsの問題点とその解決策について探ります。この記事の監修者小田 勝宣(おだ かつのり)第6回SDGs検定取得。SDGsに関連したWebメディア記事執筆やブログの運営など実績多数。大学事務職員時代にSDGsに関する企画立案、運営業務に携わったことからSDGsに興味を持つ。現在はSDGs未来都市に選定された「岩手町」へ移住し、地域おこし協力隊として、地方におけるSDGsの取り組み強化に貢献している。SDGsとはSDGs(持続可能な開発目標)とは、世界の取り組みであり、経済・社会・環境の課題に対処し、持続可能な未来を実現するための具体的な目標を設定しています。SDGsについてもっと知りたい方は以下の記事も読んでみてくださいね。SDGsをわかりやすく解説!17の目標の意味を簡単にまとめるSDGsの問題点とは?SDGsには、いくつかの問題点が存在します。例えば、目標のスケールが壮大である・数値目標が定められていないものがある・国や地域の状況が反映できていないなどが挙げられます。これらの問題点によって、SDGsへの取り組み方が不明確になる可能性があります。そこで、問題点を理解し、SDGsを促進するための解決策を見つける必要があります。ここからは、SDGsの問題点について詳しくご説明します。目標のスケールが壮大であるSDGsの問題点として、目標のスケールが壮大であることが挙げられます。例えば、目標2「飢餓をゼロに」・目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」・目標13「気候変動に具体的な対策を」などがあります。これらの目標は、スケールが壮大であり、個人や企業では取り組みにくいという課題があります。数値目標が定められていない目標があるSDGsには、数値目標が定められていない目標があるという問題もあります。以下に具体例を挙げながら、説明します。例えば、目標4「質の高い教育をみんなに」は重要な目標ですが、具体的な数値目標が欠けています。どのような基準で「質の高い教育」と定義し、どのような指標で測定するのかが明確にされていません。このため、教育の質を測るための一貫した評価や比較が困難になります。同様に、目標11「住み続けられるまちづくりを」も数値目標がありません。都市の持続可能性や住みやすさは主観的な要素も含んでおり、そもそも数値化が難しいという課題があります。目標の達成度を評価するためには、明確な数値目標や指標が必要ですが、現状ではその基準が不明確です。このように、SDGsの数値目標が欠けていることで、目標の進捗状況の評価や比較が困難になる可能性があります。各目標に取り組むためには、明確な基準や指標の設定、統一的なデータ収集方法の確立などが求められます。コストがかかるSDGsの目標のなかには、必要な投資や資金調達が膨大であり、コストがかかるものがあります。以下に具体例を挙げながら、SDGsへの取り組みに伴うコストの問題点を説明します。例えば、目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」では、クリーンで持続可能なエネルギーへの移行が求められます。しかし、再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率の向上には高額な投資が必要です。とくに途上国や貧困地域では、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーへのアクセスのためのコスト負担が大きく、実現が困難といえます。同様に、目標4「質の高い教育をみんなに」では、教育の普及や質の向上が目標とされています。しかし、教育施設の整備や教師の育成、教育資源の提供には膨大な費用がかかります。とくに経済的に困難な地域では、社会的弱者が教育を受けやすくする環境づくりには、資金面での課題が存在します。このように、SDGsへの取り組みには多額のコストが伴うため、資金調達や財源の確保が重要な課題となります。SDGsの目標を達成するためには、政府・国際機関・民間企業・市民社会など、複数の関係者が協力して資金を提供する必要があります。また、コストがかかるという課題に対処するために、資金調達の多様化や効果的な資金の使途確保が求められます。国や地域の違いが反映されていないSDGsは、世界共通の目標や指標を採用しており、地域の特性や課題に十分に対応できていないという問題があります。以下に具体例を挙げながら、説明します。例えば、目標8「働きがいも経済成長も」では、働きがいの向上と持続的な経済成長を目指しています。しかし、各国や地域の経済的な状況や労働市場の特性は異なるため、同じ目標を設定することは適切ではありません。地域の特性に合わせた目標設定をすることが必要です。同様に、目標11「住み続けられるまちづくりを」も地域の違いを反映できていないという問題があります。都市の発展や住環境の改善には、地域の特性や文化、人口密度などの要素を考慮する必要があります。しかし、SDGsでは、地域ごとの違いを十分に考慮していないと指摘されています。このように、SDGsは国や地域の違いを反映できていないという問題があります。地域ごとに異なる社会経済的な課題や環境の状況に対応するためには、各国が、地域固有の目標や指標を設定し、適切なアクションプランを策定する必要があり、負担が大きくなります。SDGsウォッシュにつながりやすいSDGsが世界的に掲げられたことで、新たにSDGsウォッシュという問題が起きています。SDGsウォッシュとは、企業や組織が、実態が伴っていないのに、SDGsへの取り組みを行っているように見せかけることです。企業の単なるイメージアップなどPRのために、企業や組織がSDGsを掲げることがあります。SDGsウォッシュの問題は、持続可能性への誠実な取り組みや実際の成果の評価を困難にします。企業や組織がSDGsに関連する取り組みを行う際には、透明性と説明責任が重要です。具体的な行動計画や成果の報告、第三者による独立した検証などが求められます。どのように解決する?SDGsには、ここまで述べてきたように、以下のような問題点があります。目標が壮大である数値目標が設定されていない目標があるコストがかかるSDGsウォッシュに繋がる国や地域の違いが反映されていないそこで、これらの問題に対して適切な解決策を見つけることが重要です。ここからは、SDGsの問題点に対する具体的な解決策を提案します。目標を具体化するSDGsの問題点へのアプローチの一つは、「目標を具体化する」ことです。具体的な目標設定は、SDGsの目標達成に向けた戦略的な行動計画や評価の基準を明確化し、進捗を把握するための重要な手段となります。例えば、目標7(エネルギーをみんなに、そしてクリーンに)の具体化には、再生可能エネルギーの割合を〇〇%増やす・エネルギー効率を〇〇%向上させるなどの具体的な目標を設定できます。これにより、各国や関係者が目標に向けた具体的な施策や投資を計画し、進捗を評価する際の基準となります。国や地域に合わせた目標にするさらに、国や地域に合わせた目標設定が重要です。SDGsは普遍的な目標を掲げているため、地域ごとの特性や課題を考慮した具体的な目標設定が求められます。それぞれの国や地域は独自の社会経済的な状況や環境の課題を抱えており、それに応じた目標設定が必要です。例えば、目標3(すべての人に健康と福祉を)では、健康や福祉へのアクセスに障害がないことを目指しています。しかし、各国や地域は異なる健康課題や保健システムの現状を抱えています。このため、国ごとに特定の健康問題に焦点を当てた目標設定を行うことが必要です。これにより、国や地域がそれぞれの優先事項に沿った健康政策や施策を実施し、健康格差の縮小や疾病予防に向けた具体的な取り組みをすることが可能となります。地域に合わせた目標設定は、関係者の関与と協力を促進する上でも重要です。このように国や地域が現状に合った目標設定をすることで、取り組みの方向性を共有し、地域の特性や課題に即した戦略的な取り組みを実施できます。SDGsへの理解を深める3つ目に、SDGsへの理解を深めることが重要です。SDGsに対する理解度が低い場合、目標達成に向けた具体的な行動が実行できない可能性があります。SDGsへの理解を深めることは、関係者の取り組みをより効果的にする上でも重要です。組織や企業・政府・市民社会など、関係者はSDGsの目標や原則を理解し、それに基づき、SDGsを達成するための具体的な戦略や施策を策定する必要があります。SDGsへの深い理解は、取り組みの方向性や優先事項の明確化に役立ちます。共通の目標を理解し、その重要性を共有することで、異なる分野での連携やパートナーシップが築かれます。SDGsへの理解が深まることで、関係者はより効果的な協力体制を構築し、持続可能な未来の実現に向けた取り組みを加速できます。SDGsへの理解を深めるためには、情報の提供や教育、意識啓発活動が重要です。関係者に対してSDGsの意義や目標の具体的な内容を伝えることで、理解度を向上させられます。例えば、企業や学校などの各コミュニティで研修を実施することが挙げられます。さらに、個人レベルでは、ワークショップなどに積極的に参加することが効果的です。問題点を解決している取り組み事例をご紹介!SDGsの問題点を解決するためには、具体的な取り組みが求められます。そこで、世界中で様々な国や企業がSDGsの問題点の解決に積極的に取り組んでいます。ここからは、問題点を解決できている取り組み事例を、国と企業に分けてご紹介します。まずは、国をご紹介します。国フィンランドフィンランドの首都ヘルシンキ市では、飲食店や商業施設に対して環境への配慮や社会的責任の取り組みを評価し、スコア化する「Think Sustainably」というシステムを導入しています。このThink Sustainablyでは、観光客や市民向けにサステイナブルな取り組みを実施しているレストラン、ショッピング、宿泊施設などの情報を見ることができます。この取り組みは、ヘルシンキの飲食店や商業施設がより環境に配慮した運営を行うことを促し、持続可能な開発への取り組みをすることにつながります。このシステムは、SDGsへの取り組みを推進する上で優れた事例とされています。これにより、市民や企業の持続可能な選択を促進し、環境や社会への影響を最小限に抑えることが可能になります。スウェーデンスウェーデンは、グローバル開発において重要な役割を果たすために、Swedish Policy for Global Developmentを策定しました。この政策は、スウェーデンがSDGsの実現に向けて取り組む方針と行動を明確化するために作られました。この政策では、スウェーデンの政府、民間企業、市民社会が協力し、国内外での取り組みを推進しています。スウェーデンは、ODA(政府開発援助)の増額や開発途上国とのパートナーシップの強化、持続可能なビジネスモデルの促進など、さまざまな手段を通じてグローバル開発に貢献しています。Swedish Policy for Global Development では、具体的な目標や戦略を策定し、スウェーデンは開発途上国の教育、健康、ジェンダー平等、持続可能なエネルギーなどの領域において積極的な支援を行っています。このように、スウェーデンでは国内外でのグローバル開発に取り組む姿勢と方針を明確化し、持続可能な未来の実現に向けた具体的な行動を推進しています。この政策に基づき、スウェーデンは国際的な協力やパートナーシップを通じて持続可能な開発の実現に貢献しています。次に、日本の企業の取り組みをご紹介します。企業日立製作所日立製作所は、SDGsへの取り組みを推進するためにオンライン研修プログラムを展開しています。このプログラムは、従業員がSDGsの重要性を理解し、ビジネス活動においてSDGsの実現に積極的に貢献できるようにサポートすることを目的としています。日立製作所のSDGsオンライン研修では、従業員に対してSDGsの基本的な概念や背景についての知識を提供します。また、各SDGs目標に関する具体的な事例や取り組みについても学習することができます。これにより、従業員はSDGsの目標や意義を深く理解し、日立製作所がSDGsに向けた取り組みをどのように推進しているかを把握することができます。加えて、従業員は、学んだ知識やスキルを日常業務に活かすことで、持続可能な社会の実現に向けた貢献を実現することができます。サントリーサントリーは、自社の事業活動がSDGsに貢献するための数値目標を設定しています。例えば、サントリーは2030年までに温室効果ガス排出量を50%削減するという具体的な目標を掲げています。具体的な数値目標を設定することで、サントリーが持続可能性の実現に向けた取り組みを透明化し、継続的な改善を追求することに繋がっています。サントリーは進捗状況を定期的に報告し、持続可能性に関する情報を広く共有し、顧客との信頼関係を構築しています。具体的な数値目標の設定と取り組みにより、サントリーは環境保護や社会的な課題の解決に向けた努力を積極的に推進しています。サントリーのように具体的な数値目標を設定することによって、SDGsに取り組みやすくなります。まとめSDGsには、目標のスケールが壮大である・各地域の現状を反映できていない、などの課題があります。しかし、国や企業は具体的な数値目標を設定することや重複を避ける取り組みを行うことで解決に取り組んでいます。私たちは、SDGsの問題点を理解した上で、持続可能な未来を築くたSDGsに取り組むことが重要です。

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SDGsを会社に導入する方法とは?メリットや取り組み事例も一挙紹介!

会社がSDGsに取り組むことにはとても大きなメリットがあり、現在では多くの会社がSDGsに取り組んでいます。では、会社はどのようにしてSDGsに取り組んでいるのでしょうか?この記事では、SDGsを会社に導入する方法とそのメリット、SDGsに取り組む会社の事例を目標別にご紹介します。この記事の監修者小田 勝宣(おだ かつのり)第6回SDGs検定取得。SDGsに関連したWebメディア記事執筆やブログの運営など実績多数。大学事務職員時代にSDGsに関する企画立案、運営業務に携わったことからSDGsに興味を持つ。現在はSDGs未来都市に選定された「岩手町」へ移住し、地域おこし協力隊として、地方におけるSDGsの取り組み強化に貢献している。SDGsとは?(出典:SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン|国際連合広報センター)SDGsとは「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の略で、2015年に国連で採択された目標です。2030年までに達成すべき17の目標と169のターゲットで構成されており、環境や社会の課題を解決し、全ての人が平等に幸せに暮らせる世界を目指しています。SDGsについてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。SDGsの意味や背景、各目標の内容や進捗状況など、わかりやすく紹介しています。SDGsをわかりやすく解説!17の目標の意味を簡単にまとめる会社がSDGsに取り組むメリットとは?SDGsに取り組むことは、会社にとって大きなメリットがあります。ここでは、主なメリットを4つご紹介します。コスト削減や業務効率化につながるSDGsの取り組みの中には、エネルギーや資源の節約・廃棄物の削減・循環型経済の推進といった、コスト削減や業務効率化につながるものが多くあります。例えば、再生可能エネルギーの活用やデジタル化によって、電気代や紙代を減らしたり、業務プロセスを改善したりできます。これらの取り組みは、環境や社会に優しいだけではなく、会社の収益性や競争力を高める効果も期待できます。投資家の注目を集められるSDGsに取り組むことで、投資家から良い評価を得られる可能性が高まります。近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)という観点から企業を評価する投資方法が注目されています。ESG投資は、企業の財務的なパフォーマンスだけでなく、環境や社会への貢献度・経営体制の健全性なども重視する投資です。ESG投資は、世界的なトレンドであり、日本でも急速に拡大しています。SDGsはESGと密接に関係しており、SDGsに取り組むことはESGへの取り組みとしても認められます。またSDGsに取り組む目的で資金を必要とする場合、資金用途が限定された債券である「SDGs債」を発行することで、資金を調達しやすくなります。一般の債券とは異なり、SDGs債はSDGsの取り組みに直結した金融商品であるため、投資家の注目を集められるでしょう。したがって、SDGsに取り組むことは、投資家からの信頼や支持を得られ、資金調達が容易になったり、株価が上昇したりする可能性があります。新たな市場や顧客層を開拓できるSDGsに取り組むことは、新たな市場や顧客層を開拓するチャンスでもあります。SDGsは世界共通の目標であり、多くの国や地域で課題解決に向けた動きが活発化しています。その中で、自社の技術やサービスを活用して課題解決に貢献することで、新規事業や海外展開の機会を掴めます。また、SDGsに関心が高い消費者や若者など、新たな顧客を獲得できるかもしれません。SDGsは、消費者ニーズや市場動向に合った事業を展開するための、有効な指標でもあります。従業員のモチベーションが上がるSDGsに取り組むことは、従業員のモチベーションを高める効果もあります。自分が関わる事業がSDGsに関係していると、社会的意義がわかりやすくなります。その結果、従業員は自分の仕事に対して誇りや達成感を覚えるかもしれません。また、SDGsには目標8「働きがいも経済成長も」があるため、この目標に沿って働き方改革に取り組むことで、従業員が働きやすくなるでしょう。さらに、SDGsに取り組んでいることを公表することで優秀な人材の確保がしやすくなるかもしれません。実はある調査では、学生の半数以上が「就職活動において企業のSDGsに関する取り組みを意識している」と回答しています。また、66.1%の学生が「企業がSDGsに取り組んでいることを知ると、志望度が上がる」と回答しています。このようにSDGsに取り組むことには、人材確保や育成、離職率の低下など、人事面でのメリットがあります。SDGsを会社に導入するには?SDGsを会社に導入するには、どのような方法があるのでしょうか?参考になるものとして「SDGコンパス(SDGsの企業行動指針)」という、国連などの国際的な団体が協力して作成した資料があります。この資料では、企業がSDGsへの貢献度を高めるために必要な、以下の5つのステップが紹介されています。SDGsを理解する優先課題を決定する目標を設定する経営へ統合する報告とコミュニケーションを行うこの記事では、このステップに沿って、SDGsを会社に導入する方法を詳しく解説していきます。SDGsを経営戦略に取り入れたい方はぜひ参考にしてください。SDGコンパスの資料は以下のサイトから無料でダウンロードできます。Download the SDG Compass Guide|SDGs Compass1. SDGsを理解するSDGsを会社に導入するには、まずSDGsが何を意味し、どのような目標やターゲットがあるのか理解することが必要です。SDGsを理解するには、資料を読んだりインターネットで調べたりする方法もあります。しかし、もっと効果的な方法は、SDGs研修を受けることです。SDGs研修では、SDGsの意義や内容・進捗状況などをわかりやすく学べるほか、自社の事業とSDGsの関係性を分析したり、自分の役割や責任を考えたりできます。SDGs研修に興味がある方は、以下の記事をご覧ください。SDGs研修のメリット・内容・選び方などについて詳しく紹介しています。SDGs研修のメリットや実施方法を徹底解説!研修内容からおすすめの研修サービスまで紹介!2. 優先課題を決定するSDGsを理解したら、次に自社が取り組むべき優先課題を決定することが重要です。SDGsは17の目標と169のターゲットがありますが、すべてに対応することは現実的ではありません。また、すべてに対応しようとすると、効果が弱まり、方向性が分散してしまいます。そこで、自社の事業や業界と関連性が高く、影響力や貢献度が大きい目標やターゲットを選ぶことが必要です。優先課題を決定する方法としては、以下のようなものがあります。・SDGsマトリクスを作成する・バリューチェーンのマッピングをする・ステークホルダーと協働するSDGsマトリクスを作成する(出典:「SDGs経営/ESG投資の現状と課題」|経済産業省)SDGsマトリクスとは、自社の事業や業界とSDGsの関係性を分析するための表です。縦軸にESG重要課題、横軸にSDGsの17の目標を配置します。この例では7つの中核主題に「ISO26000」の規格が用いられており、それに基づいて事業に沿ったESG重要課題を決めています。そして関連するSDGs目標には白丸、とくに関連するSDGs目標には黒丸を記すことで、どのSDGs目標がより重要かわかるのです。バリューチェーンのマッピングをする(出典:SDG Compass SDGsの行動指針|SDGs Compass)バリューチェーンとは、企業の事業活動を価値創造のための一連の流れとして捉える考え方です。バリューチェーンを分析することで自社の強みや課題を見つけられ、強みを伸ばしたり、課題を解決したりする方法を考えられます。そしてその課題解決に向けて、SDGsに沿った形で自社の課題を解決することで、自社の利益を出しつつSDGsに貢献できます。ステークホルダーと協働するステークホルダーとは、自社に関係する人や組織のことで、顧客・従業員・取引先・投資家などのことを指します。ステークホルダーのニーズ・期待・課題・意見などを聞き、自社が取り組むべき優先課題を決めることで、より良い取り組みにつながるでしょう。優先課題を決定することは、SDGsへの取り組みの方向性や戦略を策定するための基礎となるため、必ず行いましょう。3. 目標を設定する優先課題を決定したら、次に目標の設定が必要です。目標とは、SDGsへの取り組みで自社が達成したい具体的な数値や期限のことです。また目標を設定することで、SDGsへの取り組みの進捗や成果を測ることができます。目標を設定する方法としては、以下のようなものがあります。・KPI(主要業績評価指標)とベースラインを設定する・アウトサイド・イン・アプローチで考える・SMART原則に従って設定するKPI(主要業績評価指標)とベースラインを設定するKPIは、業務が順調に進んでいるかを計るための定量的な指標です。大きな目標を達成するために、どのような事をどの程度行えばよいか具体的に決めることで、SDGsの取り組みが行いやすくなります。SDGsコンパスの例では、たとえば「カーボンニュートラルを達成する」という目標は曖昧で、いつまでに何をすればよいかわかりません。「2030年までに自社工場の二酸化炭素排出量を半減させる」というKPIを設定することで、達成度を定量的に表せます。また、KPIにはベースラインを設定しなければなりません。上記のKPIでは、いつの時点と比較して半減させるのかわからず、不明瞭なままになってしまいます。「2030年までに自社工場の二酸化炭素排出量を2020年度より半減させる」や「この5年で自社工場の二酸化炭素排出量を半減させる」といったKPIにすると良いでしょう。アウトサイド・イン・アプローチで考える(出典:SDG Compass SDGsの行動指針|SDGs Compass)アウトサイド・イン・アプローチとは、世界的・社会的ニーズに応えられるように目標を考えることです。その反対がインサイド・アウト・アプローチで、自社の現状・過去の業績・競合他社の動向を見ながら目標を考えることです。アウトサイド・イン・アプローチのほうが、よりSDGs達成に貢献できるため、世界的な課題を見ながら目標を考えられるようにしましょう。SMART原則に従って設定するSMART原則とは、達成可能な目標を設定するための、5つの要素をまとめたものです。それぞれ、Specific(明確)・Measurable(測定可能)・Achievable(達成可能)・Relevant(関連性の高い)・Time-bound(期限のある)の頭文字をとったものです。 この原則に従って、目標を具体的かつ現実的に設定しましょう。目標を設定することは、SDGsへの取り組みの実行力や信頼性を高めることにもなります。自社に合った方法で目標を設定しましょう。4. 経営へ統合する(実践する)目標を設定したら、次に経営へ統合する必要があります。「経営へ統合する」とは、目標を業務に反映させること、つまり実践に移すということです。経営へ統合することで、SDGsへの取り組みを全社的に推進し、目標の達成に向けて実行できます。経営へ統合する方法としては、以下のようなものがあります。・目標を社内に定着させる・すべての部門に役割を与える・パートナーシップに取り組む目標を社内に定着させる経営者や役員などの上層部から従業員へ、目標や方針を伝える必要があります。たとえばある目標について、部門や個人が大きく貢献した際には特別報償を与えるなど、全社員で目標達成を目指せるような制度を作ることが大切です。すべての部門に役割を与えるSDGsに取り組みやすそうな部門だけに役割を与えていては、全社でSDGsに取り組む風土が整えられません。SDGsを専門とする部門から、各目標について主導権を握るべき部門に権限を委任させ、それぞれの部門が主体的に行動する必要があります。パートナーシップに取り組むSDGsの目標を達成するためには、社内で取り組むだけではなく、サプライヤーなどの社外関係者とも協力して取り組む事が求められます。SDGsコンパスでは、パートナーシップに取り組むべき理由を以下のように説明しています。2014 年に実施されたある調査によれば、調査対象となった3万8,000人の企業の役員・管理職およびオピニオンリーダーのうち、90%が持続可能性の課題は企業単独では効果的に対処することはできないと回答した。(出典:SDG Compass SDGsの行動指針|SDGs Compass)このように単独では解決できない課題が多いため、社外とのパートナーシップを結び、一緒にSDGs目標の達成を目指していきましょう。そのためには、目標や取り組みを公表することが大切になります。経営へ統合することは、SDGsへの取り組みの持続性や効果を高めることにもなるため、積極的に推進していきましょう。5. 報告とコミュニケーションを行う(投資家や従業員に説明する)経営へ統合したら、次に報告とコミュニケーションを行うことが必要です。「報告とコミュニケーション」とは、自社がSDGsにどのように取り組んでいるかを、投資家・従業員・顧客・社会全体などのステークホルダーに伝えることです。報告とコミュニケーションを行うことで、SDGsへの取り組みの透明性や信頼性を高められます。報告とコミュニケーションを行う方法としては、以下のようなものがあります。・サステナビリティレポートや統合報告書を作成する・ウェブサイトやSNSなどを活用するサステナビリティレポートや統合報告書を作成するサステナビリティレポートや統合報告書とは、自社の財務情報だけでなく、環境や社会への影響や貢献なども含めた総合的な報告書です。サステナビリティレポートや統合報告書を作成することで、自社のSDGsへの取り組みの内容・成果・課題・展望などを投資家や社会全体に示せます。ウェブサイトやSNSなどを活用するウェブサイトやSNSなどを活用することで、自社のSDGsへの取り組みの様子や、事例・イベント・キャンペーンなどを社外に伝えられます。ウェブサイトやSNSなどでは、サステナビリティレポートや統合報告書よりも気軽に情報を見られるため、企業のイメージアップに最適です。報告とコミュニケーションは、SDGsへの取り組みの価値や影響力を高めることにもなるため、活動内容を適切に伝えるようにしましょう。【目標別】SDGsに取り組む会社の事例をご紹介!ここまで、SDGsを会社に導入するメリットや方法をご紹介しましたが、実際にはどのような会社がSDGsに取り組んでいるのでしょうか?ここでは、SDGsの17の目標ごとに、日本の会社の事例を1社ずつご紹介します。それぞれの会社がどのようにSDGsに貢献しているか、どのような効果や成果を得ているかを見ていきましょう。目標1.貧困をなくそう目標1が目指しているのは、貧困や飢餓、不平等などの根本的な原因を解決し、全ての人が基本的な生活水準を保てるようにすることです。この目標に取り組んでいる会社の一例として、UCC上島珈琲株式会社があります。UCC上島珈琲株式会社は、コーヒー豆の生産国であるベトナムやインドネシアなど7か国で、「UCC品質コンテスト」というコーヒー豆のコンテストを実施しています。これは最高のコーヒー豆を表彰することを一番の目的としているのではなく、生産者のモチベーションを高めて、取り扱うコーヒー豆全体の品質向上を目指しています。コーヒー豆の品質が上がれば、生産者の収入が上がり、生活水準の向上にもつながります。またUCCにとっても、高品質な豆が安定的に調達できるようになるため、双方にメリットがあるのです。同社は、自社の事業とSDGsの目標1を結びつけて、コーヒー豆の生産者の生活水準向上に貢献しています。(出典:UCC品質コンテスト|UCC上島珈琲株式会社)目標2.飢餓をゼロに目標2では、全ての人が十分な食料を得られるようにし、飢餓や栄養不足をなくすことを目指しています。この目標に取り組んでいる会社の一例として、日本マクドナルドホールディングスがあります。日本マクドナルドホールディングスは、持続可能な食材調達に取り組んでいます。例えば「フィレオフィッシュ」に使用する白身魚は、MSC認証を取得した天然のスケトウダラです。MSC認証は「海のエコラベル」とも呼ばれ、持続可能な漁業で獲られた水産物であることを証明するものです。またパティに使われる牛の飼育が、アニマルウェルフェア(動物福祉)に配慮して行われるよう、生産者をサポートしています。このように同社は、持続可能な食材調達に取り組むことで、飢餓をゼロに近づけようとしています。(出典:マクドナルドとSDGs|日本マクドナルドホールディングス)目標3.すべての人に健康と福祉を目標3では、全ての人が健康で生き生きと暮らせるようにし、感染症や病気、母子の健康などの課題を解決することを目指しています。この目標に取り組んでいる会社の一例として、ヤクルトグループがあります。ヤクルトグループは、乳酸菌飲料の製造と販売をすることで、人々の健康と福祉に貢献しています。創業時から「予防医学」を志し、乳酸菌シロタ株を生み出した創業者の代田稔の精神を受け継ぎ、予防医学や健康維持の研究、製品開発を行っています。同社は、自社の事業そのものがSDGs目標3に貢献していると考えています。(出典:SDGsへの貢献|ヤクルトグループ)目標4.質の高い教育をみんなに目標4では、全ての人が平等に質の高い教育を受けられるようにし、学習機会やスキルを拡大することを目指しています。この目標に取り組んでいる会社の一例として、東京ガスがあります。東京ガスは、専任の社員が各学校に出向いて、エネルギーに関する教育や体験学習の機会を提供するため、以下5つの「出前授業プログラム」を実施しています。・社会科・総合の授業向け「安心安全ガスの防災」「ガスの歴史とくらしの変化」「都市ガスが家に届くまで」・理科・総合の授業向け「燃料電池ってなんだろう?」・家庭科・総合の授業向け「はじめよう!エコ・クッキング」同社は自社の事業とSDGsの目標4を結びつけ、エネルギーに関する理解や関心を深める授業を行うことで、教育と学習に貢献しています。(出典:未来を担う子どもたちの学びのために◆SDGs4:学校教育支援の取り組み|東京ガス)目標5.ジェンダー平等を実現しよう目標5が目指していることは、男女の平等・女性の権利や能力の向上を促進することです。この目標に取り組んでいる会社の一例として、化粧品メーカーのコーセーがあります。コーセーは、「女性と地球にスマイルを増やしたい」という理念に基づき、一般社団法人バンク・フォー・スマイルズが運営する「コスメバンクプロジェクト」に参画しています。このプロジェクトでは、貧困や雇用の悪化に苦しむ女性に化粧品を無償で提供し、自信と希望を与える活動を行っています。さらに、当プロジェクトを利用する女性の就労活動のサポートのために、メイクアップセミナーも開催しています。同社は、化粧品を通じて社会に向けた女性活躍への支援を行っています。(出典:取り組み1:ジェンダーダイバーシティ(女性活躍・LGBTQ+、男女共同参画)|コーセー)目標6.安全な水とトイレを世界中に目標6が目指していることは、安全で清潔な水や衛生設備を全ての人が利用できるようにし、水資源の持続的な管理を行えるようにすることです。この目標に取り組んでいる会社の一例として、ヤマハ発動機株式会社があります。ヤマハ発動機株式会社は、小型浄水装置「ヤマハクリーンウォーターシステム」をアフリカやアジアの新興国を中心に14カ国で42基設置しています。「ヤマハクリーンウォーターシステム」は、自然界の水浄化機能を利用したシンプルな構造で、電力や凝集剤を必要とせず、住民による自主運営が可能です。これにより、水に関する衛生・健康・教育・ビジネス・自治などの面で、人々の暮らしにポジティブな変化をもたらしています。同社は、国内外の様々な機関と連携して、この小型浄水装置の導入を進めています。(出典:クリーンウォーターシステム|ヤマハ発動機株式会社)目標7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに目標7では、安価で信頼できる再生可能エネルギーを全ての人が利用できるようにし、エネルギーの効率や持続性を向上させることを目指しています。この目標に取り組んでいる会社の一例として、再生可能エネルギーを活用した電力供給を行う、株式会社未来電力があります。株式会社未来電力は、大分県宇佐市でバイオガス発電を行っており、発電時の二酸化炭素量の削減を目指しています。県内を中心とした焼酎メーカー・⾷品メーカーから廃棄される焼酎カスや食品加工後の残りを発酵させてメタンガスを発生させ、そのガスでタービンを回し発電します。ガスを取り出した後に残る消化液は、液肥や固形肥料にして再利用することで循環型農業に貢献しています。同社はこれらの取り組みによって、エネルギー供給をよりクリーンなものにしています。(出典:SDGsへの取り組み|株式会社未来電力)目標8.働きがいも経済成長も目標8では、全ての人が適正な労働条件で安定して働けるようにし、経済の成長や生産性を高めることを目指しています。この目標に取り組んでいる会社の一例として、日本郵政株式会社があります。日本郵政株式会社は、従業員のキャリアパスに応じた育成や自己啓発の支援を行っています。また、ダイバーシティマネジメントを推進し、女性や障がい者の活躍を促進しています。さらに、健康経営にも力を入れ、従業員とその家族の健康を守るための施策を実施しています。同社は、働きやすく働きがいのある職場環境を整備し、社会に貢献する企業を目指しています。(出典:SDGs達成に向けた取り組み|日本郵政株式会社)目標9.産業と技術革新の基盤をつくろう目標9では、産業やインフラ、イノベーションの発展を促進し、経済の多様化や持続可能性を高めることを目指しています。この目標に取り組んでいる会社の一例として、Sky株式会社があります。Sky株式会社は、サイバー攻撃や情報漏洩などのリスクに対抗するため、IT機器の管理とセキュリティを強化するシステムを提供しています。自社開発の商品を用いて、クライアントPCの運用管理や端末の仮想化、名刺情報の活用などを支援し、組織のIT環境を安全で効率的なものにしています。Sky株式会社は組織のIT環境を守ることで、産業と技術革新の基盤づくりに貢献しています。(出典:SDGsへの取り組み|Sky株式会社)目標10.人や国の不平等をなくそう目標10は、人種や性別、年齢や障害などの違いによる差別や不平等をなくし、全ての人が公平に機会や資源を享受できるようにすることです。この目標に取り組んでいる事業の一例として、「久遠チョコレート」があります。「久遠チョコレート」は、チョコレートを通じて障がい者の社会参加と自立を支援する「全国夢のチョコレートプロジェクト」を展開しています。全国の障がい者事業所と協力して、高品質なチョコレートを製造・販売し、所得アップや就労機会の創出に貢献しています。また、愛知県豊橋市には「QUONチョコレート豊橋SDGsラボ」を設置し、持続可能な社会に向けた取り組みを行っています。この活動は、第2回ジャパンSDGsアワードにて内閣官房長官賞を受賞するなど、高い評価を得ています。「久遠チョコレート」は、チョコレートの魅力とパワーを伝えるとともに、障がい者の社会参加と自立に向けて取り組んでいます。(出典:QUONチョコレート×SDGs|久遠チョコレート)目標11.住み続けられるまちづくりを目標11が目指していることは、全ての人が安全で快適に暮らせる都市やコミュニティを作り、災害や気候変動などのリスクに対応できるようにすることです。この目標に取り組んでいる会社の一例として、積水化学工業株式会社があります。積水化学工業株式会社は、暮らしの安全性と災害耐性強化に取り組んでいます。地震に強い高性能ポリエチレン水道管や火災に強い耐火材「フィブロック」などの製品を開発・提供し、水インフラや建築物の被害を軽減、早期復旧を支援しています。同社は、災害前の準備と発生後の早期復旧の両面から、暮らしの安全性を高める製品・技術を提供しています。(出典:豊かで安心な暮らしのために|積水化学工業株式会社)目標12.つくる責任・つかう責任目標12では、資源・エネルギーの生産と消費を効率的かつ持続可能にし、廃棄物や汚染を減らすことを目指しています。この目標に取り組んでいるサービスの一例として、ファッションレンタルサービスの「shareCloset(シェアクローゼット)」があります。「shareCloset」は、着なくなった洋服を再生して、次の人に届ける取り組みです。実は、日本国内の服の廃棄量は年間30億着以上と言われており、この問題に対処するためのサービスとなっています。回収された洋服の状態に応じて、シェアリングに回したり、リサイクルしたりしています。こうして洋服の無駄を減らし、ファッションとの新しい出会いを創出しています。出典:shareCloset目標13.気候変動に具体的な対策を目標13が目指していることは、気候変動の影響を軽減し、適応力を高めるようにすることです。この目標に取り組んでいる会社の一例として、プリンターやプロジェクターなどを製造している、セイコーエプソン株式会社があります。同社は乾式オフィス製紙機「PaperLab(ペーパーラボ)」を開発しています。「PaperLab」は、使用済みのコピー用紙や印刷物を繊維化することで、再生紙にする製品です。この製品では、紙の原料である木材資源の消費や廃棄物の発生を減らせます。また、再生紙の生産にともなう水やエネルギーの使用量も大幅に削減できるのです。これによって、気候変動による森林破壊や水不足などの問題に対処できます。会社にPaperLabを導入することで、資源の節約に貢献できるでしょう。(出典:乾式オフィス製紙機PaperLab|セイコーエプソン株式会社)目標14.海の豊かさを守ろう目標14が目指していることは、海の生物多様性や資源を保護し、持続可能な利用や管理を行えるようにすることです。この目標に取り組んでいる会社の一例として、自動車やオートバイ、船外機などを製造する、スズキ株式会社があります。スズキ株式会社は、海洋プラスチックごみ問題に取り組む「スズキクリーンオーシャンプロジェクト」を行っています。このプロジェクトでは、船外機に取り付け可能なマイクロプラスチック回収装置を開発し、世界初の走行するだけで水面付近のマイクロプラスチックを回収する仕組みを提供しています。また水辺の清掃活動や、船外機・部品の梱包資材のプラスチック削減なども行っています。同社は「THE ULTIMATE OUTBOARD MOTOR (究極の船外機)」を目指して、世界中のパートナーとともに海をキレイにしています。(出典:スズキ、世界初の船外機用マイクロプラスチック回収装置を開発|スズキ株式会社)目標15.陸の豊かさも守ろう目標15が目指していることは、森林・湿地・山岳などの陸の生態系や生物多様性を保護し、持続可能な利用や管理を可能にすることです。この目標に取り組んでいる会社の一例として、紙などの製品を提供する株式会社イムラがあります。株式会社イムラは、森林資源の適正な利用・管理だけでなく、森林環境の保全・再生、そして環境に優しい素材や製品の開発・普及を行っています。たとえば、相模原工場では東京都町田市のボランティア団体と協力し、ホタルや絶滅危惧種のホシザクラを守る活動を支援しています。また、製品の一部に間伐材を利用しており、2021年度には2017年度の約3.3倍の使用量となっています。これによって、木材資源の節約や適切な森林環境の形成につながっています。(出典:SDGsへの取り組み|株式会社イムラ)(出典:その他の取り組み|株式会社イムラ)目標16.平和と公正をすべての人に目標16では、暴力・テロ・汚職などのない平和な社会を実現し、全ての人の人権や法の支配を保障することを目指しています。この目標に取り組んでいる会社の一例として、IT機器のリユースやリサイクルを行う、株式会社ゲットイットがあります。IT機器に必要な資源であるレアメタルの採掘や生産には、人権侵害や環境汚染などの問題が起こることがあるのです。たとえば、レアメタルを巡った紛争で子どもたちが徴兵されたり、女性が被害にあったりしています。この問題に対処するために、株式会社ゲットイットはIT機器のリユースやリサイクルを促進することが必要だと考えています。また同社は紛争鉱物問題の解決のため、NPO等と連携して、子どもたちの徴兵防止や紛争被害女性の支援に取り組んでいます。(出典:企業 × NPO 連携強化:コンゴ民主共和国における「紛争鉱物問題」に対し、生活再建・生計向上のための各種プログラムを支援へ|株式会社ゲットイット)目標17.パートナーシップで目標を達成しよう目標17では、国・地域・組織・個人などの多様な主体が協力して、SDGsの達成に向けて資源や技術、知識などを共有することを目指しています。この目標に取り組んでいる会社の一例として、銀行など金融サービスを提供している、東京きらぼしフィナンシャルグループがあります。東京きらぼしフィナンシャルグループは、東京都の「東京グリーンボンド」や川崎市の「川崎グリーンボンド」などの債券に投資しています。これらの債券は、気候変動の緩和や適応に資する環境事業に資金を提供するものであり、同行は、SDGsに関するESG投資等を積極的に行っています。ESG投資を通じて、地域経済と地域社会の持続的な発展に貢献しています。(出典:地域連携・産学連携に関する活動|東京きらぼしフィナンシャルグループ)SDGsに興味がある方は「Socialgoo」がおすすめこの記事では、SDGsを会社に導入する方法やメリット、目標別の会社の事例をご紹介しました。SDGsについて「さらに詳しく知りたい!」と興味をもたれた方は、当サイト「Socialgoo」をチェックしてみてください!「Socialgoo」では、SDGsの各目標の内容や取り組み事例などをわかりやすく解説しています。会社だけではなく、私たち一人一人にもSDGsに取り組むメリットがあります。詳しく知りたい方はこちら!【企業・個人別】SDGsの取り組みで得られるメリット11選|デメリットやリスクなどを徹底解説企業の取り組み・私たちができることについて詳しく知りたい方はこちらをチェック!企業のSDGs取り組み事例10選|個人でできる身近な例もご紹介これらの情報を参考にして、自社のSDGsへの取り組みを考えてみてくださいね!まとめこの記事では、SDGsを会社に導入する方法とそのメリット、目標別の会社の事例をご紹介しました。SDGsに取り組むことは、環境や社会だけでなく、自社にもプラスになります。SDGsを理解し、他社の事例を参考にしながら、自社に合った形でSDGsに取り組んでいきましょう!

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ホテルのSDGs取り組み事例をご紹介!今すぐ始めるべきサステナブルなホテル経営とは?

ホテル業界にとって、SDGs(持続可能な開発目標)に取り組むことはとても大切です。SDGsは2030年までに国連が掲げた17の目標で、環境や社会の課題を解決するために世界中で協力して行動することを目指しています。近年では地域文化や環境に配慮した観光である「サステナブル・ツーリズム」への期待や需要が高まっており、それにともなってSDGsが注目されています。本記事では、ホテルがSDGsに取り組む意義や方法、日本のホテルで行われている取り組み事例をご紹介します。ささいなことや身近なことから取り組めるので、ぜひ参考にしてみてください!この記事の監修者小田 勝宣(おだ かつのり)第6回SDGs検定取得。SDGsに関連したWebメディア記事執筆やブログの運営など実績多数。大学事務職員時代にSDGsに関する企画立案、運営業務に携わったことからSDGsに興味を持つ。現在はSDGs未来都市に選定された「岩手町」へ移住し、地域おこし協力隊として、地方におけるSDGsの取り組み強化に貢献している。SDGsは今のホテル業界に必要不可欠!ホテルがSDGsに取り組むことは、ホテル業界にとって今や必要不可欠なことです。ホテル業界は水・食品・アメニティなどを多く使うため、多くの資源を消費し、環境に対する負荷が大きい業界と言えます。そしてホテルは多くの人々が訪れる場所であり、地域社会や観光業とも密接に関わっています。そのため、ホテルがSDGsに取り組むことで、地球環境の保護・地域の活性化・人々の幸せに貢献できます。さらに、サステナブルなホテルを目指すことで、お客様・従業員・地域社会・行政などのステークホルダー(利害関係者)からの信頼や評価を高められます。つまり、サステナブルなホテル経営は経済的・社会的・環境的な面でトリプルウィン(三方良し)の効果を生み出すことができるのです。また、環境や地域社会に配慮した取り組みを行う前に、SDGsに関連する政策や法律、認証を確認しておくこともホテル経営に必要となります。SDGsと関連する政策・法律・認証ホテルがSDGsに取り組むことは、政策や法律、認証などの観点からも必要です。ここでは、日本政府観光局の政策・プラスチック資源循環促進法・サクラクオリティの3つをご紹介します。日本政府観光局(JNTO)日本政府観光局(JNTO)はポストコロナの観光を見据え、2021年6月に「SDGsへの貢献と持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム)の推進に係る取組方針」を策定しました。この方針に基づき、JNTOは以下のような取り組みを行っています。組織運営やプロモーション活動における環境保全への配慮持続可能性を体現する観光コンテンツの海外向け情報発信先進事例の国内向け情報提供責任ある観光(レスポンシブル・トラベル)の奨励ユニバーサル・ツーリズムに関する情報発信JNTOはサステナブル・ツーリズムを推進することで、日本と世界の持続可能な発展に貢献しています。プラスチック資源循環促進法プラスチック資源循環促進法とは、2022年4月に施行された法律で、プラスチック製品の節約や有効利用を促進し、ごみの削減を目指すものです。とくにホテル業界では、歯ブラシ・くし・カミソリなどが当てはまり、そうしたプラスチック製品の再利用・削減・代替素材への転換に取り組むべきでしょう。サクラクオリティ出典:サクラクオリティサクラクオリティとは、ホテルや旅館などの宿泊施設の品質認証制度で、申請のあった宿泊施設が「安心・安全・誠実」であるか第三者が評価し、品質の高さを認証する仕組みです。また「サクラクオリティグリーン(Sakura Quality An ESG Practice)」という認証制度もあり、これはSDGsやESGに関する取り組みを評価するものです。ESGとは企業が持続可能な社会づくりに貢献するために重視すべき3つの要素であり、以下のような内容となっています。環境(Environment):温室効果ガスの排出削減や自然エネルギーの活用など社会(Social):人権や労働条件の改善や多様性の尊重などガバナンス(Governance):コンプライアンスやリスク管理や情報開示などサクラクオリティグリーンは、これらのESGに関する取り組みを評価する項目や基準を設けており、それらに適合した宿泊施設に対して認証を与えています。 これら2つの認証を得ることで、ホテルがSDGsや安全性に配慮していることを宿泊客に伝えられます。上記3つの政策・法律・認証は、SDGs目標12「つくる責任、つかう責任」・目標13「気候変動に具体的な対策を」・目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」などに関係しています。ホテル業界がSDGsに取り組むことは、今後ますます重要性を増していくことでしょう。ホテルができるSDGsの取り組みホテルがSDGsに取り組むためには、環境に配慮した運営や食品を大切にする取り組み、地域社会との協力、そして多様性の尊重が必要不可欠です。ここでは、ホテルでできるSDGsの取り組みについて、具体的な事例を紹介します。環境に配慮した運営ホテルが環境に配慮した運営を行うことは、SDGsに取り組むうえで非常に大切なことです。具体的には、エネルギーや水の節約・環境に優しい設備や備品の導入・廃棄物の削減やリサイクルが挙げられます。これら3つの取り組みは、SDGs目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」・目標12「つくる責任、つかう責任」・目標13「気候変動に具体的な対策を」などに対応しています。エネルギー・水の節約ホテルでは、エネルギーや水の節約にも力を入れることが大切です。近年増えている取り組みは、連泊時の簡易清掃の呼びかけです。連泊するお客様に対して、タオル交換のみの簡単な清掃をお願いすることで、清掃時の電力や水の消費を減らせます。他にも節電や節水のために、外出時に部屋の電気やエアコンが自動で切れるセンサーを導入したり、シャワーヘッドを節水仕様のものにしたりするのも良いでしょう。環境に優しい設備・備品の導入ホテルで使用されるアメニティや設備も、環境に配慮したものにできます。例えば、ミニボトルを人数分用意するのをやめ、詰め替えポンプのシャンプーや石けんを置くことで、プラスチックの使用量を減らせます。廃棄物の削減とリサイクルペーパーレスのチェックインや、食事の残りを持ち帰り可能な容器に入れることで、廃棄物を削減することができます。また、リサイクルシステムを導入することで、廃棄物を再利用することもできます。食品を大切にする取り組みホテル業界において、食品を大切にする取り組みも増えています。具体的な取り組みとして、食品ロスの削減・ローカルフードの活用・オーガニックフードの提供が挙げられます。これら3つの取り組みは、SDGs目標12「つくる責任、つかう責任」に当てはまります。食品ロスの削減ホテルのビュッフェスタイルの食事では、食品ロスが発生しやすいです。そこで、大皿からお客様によそってもらう形式をやめて、小皿料理に変更することで、食品ロスを削減することができます。これは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の対策にもなるため、取り組んでいるホテルも多いようです。また、余った食材を寄付する取り組みも行われています。ローカルフードの活用ホテルは地域に根ざしており、地産地消を推進して地元の生産者を支援することで、地域経済に貢献できます。また、地元の特産品や新鮮な食材を生かしたメニューを売りにすることも可能です。さらに食材の輸送に伴う二酸化炭素の排出を減らせるため、環境面にも配慮できます。オーガニックフードの提供オーガニックフードは化学肥料や農薬を使わずに栽培された食品で、目標15「陸の豊かさも守ろう」などにも関係があります。近年、消費者の健康意識の高まりや環境問題への関心から、オーガニックフードの需要が増えています。ホテルがオーガニックフードを採用することで、消費者に健康的で安全な食品を提供でき、環境にも優しい取り組みとなります。地域社会への貢献ホテルが地域社会へ貢献する方法には、地元の文化や産業の紹介・ボランティアへの参加・エコツーリズムなどといった取り組みがあります。これらの取り組みはSDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」や目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」などに関係しています。地元の文化や産業の紹介ホテルで地元の文化や産業を紹介することで、地域社会に貢献できます。例えば、ホテル内に地元の特産品を販売するショップを設置したり、地元の料理を食事に取り入れたり、地元文化の体験プログラムを提供するなどの取り組みがあります。地元商品を多くの人に知ってもらえるため、生産者にとってもメリットがあるほか、その地域のブランド力も高められます。また、地元文化に触れられることで他のホテルとの差別化を図り、宿泊客の満足度やリピート率を向上できます。このように、ホテルが地域社会に根ざした取り組みを行うことで、地元の文化や産業の振興につながるとともに、ホテル自身のブランディングにもつながります。ボランティアへの参加ホテルがボランティアに積極的に参加するのも良いでしょう。ボランティアに参加することで、ホテルが地域社会の問題や課題に対して積極的に関わり、解決に向けて取り組む姿勢を見せられます。例えば、近くの観光地の清掃などのボランティア活動に参加することで、観光地の魅力アップにも繋がり、ホテルの利用者の増加も期待できます。また、災害や事故などが発生した際に防災備蓄や避難場所の提供をすることで、ホテルが被災者支援のための施設としての役割を果たしています。ホテルがボランティアへの参加を積極的に行うことで、地域社会との結びつきを強め、地域住民や観光客からの信頼・評価を高められます。また、社会的責任を果たすことで、企業としての信頼性やブランド価値も高まるでしょう。エコツーリズムエコツーリズムとは、自然保護や環境保全を目的とした観光のことで、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」や目標15「陸の豊かさも守ろう」に当てはまります。具体的には、ホテルがエコツアーや野鳥観察ツアーなどの自然体験プログラムを企画したり、地元の自然や文化を感じられる場所を紹介しています。また、観光客に環境保全の重要性を伝えることや、地域のエコな取り組みに参加することもあります。これらの取り組みは、地域の自然や文化を守るだけでなく、観光客に貴重な体験や学びを提供できます。さらに、地域の経済にも良い影響を与え、持続可能な観光産業の発展につながります。多様性の尊重ホテルがSDGsに取り組む際に重要なのは、多様性の尊重です。ジェンダー平等・異文化理解・障がいを持つお客様への配慮など、誰もがホテルで快適に過ごせるような取り組みが必要となります。さらに「すべての人が楽しめるよう創られた旅行」を意味する「ユニバーサル・ツーリズム」の実現に向けて、どんな人でも利用しやすい環境づくりが求められています。例えば、お年寄りや身体が不自由なお客様でも利用しやすいような部屋を用意すること、フロントなどの共用部分の段差を減らすことなどです。多様性を尊重することは、SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」・目標10「人や国の不平等をなくそう」・目標11「住み続けられるまちづくりを」に対応しています。以上のように、環境に配慮した運営・食品を大切にする取り組み・地域社会への貢献・多様性の尊重の観点から、ホテルはSDGsに取り組めるでしょう。日本のホテルで行われている取り組み事例をご紹介!今までご紹介したSDGsの取り組みは、実際にはどのように取り組まれているのでしょうか。ここでは、日本でSDGsを推進するホテルの事例を2つ紹介します。コンフォートホテル四日市三重県四日市市にあるコンフォートホテル四日市では「Your Sustainable Journey-未来をつくるホテル-」をコンセプトに、SDGsに取り組んでいます。例えば地産地消にこだわった朝食メニューが提供されていたり、三重県産の間伐材でできた家具や、伝統工芸品のアート・食器が取り入れられたりしています。また使用している寝具は、使わなくなった羽毛製品を洗浄・精製加工し、 新しい羽毛製品として再生させる「Green Down Project」によってリサイクルされたものです。さらに館内はオール電化しているうえ、中部電力の水力発電を利用したCO2フリー電気「三重 美し国 Greenでんき」を導入しています。同じく「三重 美し国 Greenでんき」を導入しているグループホテルの「コンフォートホテル鈴鹿」と合わせて、年間約113トンものCO2排出量を削減しています。(出典:SDGsへの取り組み|コンフォートホテル四日市)帝国ホテル(東京・大阪・上高地)帝国ホテルは「ラグジュアリーとサステナビリティの両立」を掲げ、以下の施策を実施しています。脱炭素ロードマップの作成CO2排出量の削減や再生可能エネルギーの活用などにより、2050年までにネットゼロ(温室効果ガス排出量と吸収量が同じになること)を目指しています。脱プラスチック対策プラスチック廃棄物の削減・リサイクル・代替品導入に取り組んでいます。例えば、客室のアメニティやレストランのストローなどをプラスチック製から紙製や竹製などに変更したり、従業員食堂で使い捨て容器やカトラリーを廃止したりしています。食品廃棄物の削減や有効活用レストラン・宴会場で出る食品廃棄物を乾燥させて再資源化し、パートナー企業を通じて野菜栽培用の肥料にしています。その肥料を使って生産された野菜を「環境循環型野菜」としてレストランの一部メニューで使用しています。上高地帝国ホテルのサステナビリティ推進による環境保全や地域貢献「上高地を美しくする会」に参加し清掃活動などを定期的に行うことで、上高地の環境保護に協力しています。同ホテルは、これらの取り組みの成果が認められ、全国で初めて「サクラクオリティグリーン」という認証制度で最高評価を取得しました。(出典:帝国ホテルのサステナビリティ推進活動)SDGsに興味がある方は「Socialgoo」がおすすめここまでSDGsとホテルの関係や、ホテルで行われているSDGsの取り組み事例についてご紹介しました。この記事をきっかけに、SDGsについて興味を持たれた方には「Socialgoo」がおすすめです!ソーシャルグッド(社会にとって良いサービスや活動)に特化したメディアであり、企業の取り組み事例などSDGsにまつわる様々な情報を発信しています。ぜひ他の記事もチェックしてみてくださいね!まとめ今回は、ホテル業界がSDGsに配慮することの重要性と、実際にホテルができるSDGsへの取り組みについて解説しました。環境に配慮した運営・食品を大切にする取り組み・地域社会への貢献といったさまざまな取り組みがありますが、これらは全てSDGsにつながるものです。ホテルがSDGsに配慮することで、ホテルの利益につながるうえに、旅行者や地域社会にも良い影響があります。小さな工夫や取り組みでも環境や社会への貢献に繋がることを忘れずに、今後のホテル運営に取り入れていきましょう。

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SDGs目標5の取り組み事例12選|ジェンダー平等に向けて学校・企業・公的機関ができることは?

みなさんは「ジェンダー平等」という言葉を聞いたことがありますか?ジェンダー平等を簡単に説明すると、性別による差別がない状態のことであり、これはSDGs(持続可能な開発目標)でも目指されています。現在のジェンダー平等の状況には問題があるため、改善に向けて取り組んでいかなければなりません。そこでこの記事では、ジェンダー平等に関して、日本・世界の課題やそれに対する学校・企業・社会それぞれの分野での取り組み事例についてご紹介します。この記事の監修者小田 勝宣(おだ かつのり)第6回SDGs検定取得。SDGsに関連したWebメディア記事執筆やブログの運営など実績多数。大学事務職員時代にSDGsに関する企画立案、運営業務に携わったことからSDGsに興味を持つ。現在はSDGs未来都市に選定された「岩手町」へ移住し、地域おこし協力隊として、地方におけるSDGsの取り組み強化に貢献している。SDGsはジェンダー平等を目指している!SDGsとジェンダー平等には密接な関係があります。女性の社会進出は当然の権利ですが、ジェンダーによる差別や偏見によって十分な機会を得られず、不平等な扱いを受けています。SDGsは世界中にある様々な課題を解決し、全ての人がより良い暮らしを送れる社会を目指しています。そのため、ジェンダー平等の実現はSDGsの達成に欠かせません。ジェンダー平等とは「ジェンダー」は、生物学的な性とは異なる文化的・社会的な性別のことで、社会に定着している先入観で決められた「男らしさ」や「女らしさ」を表します。ジェンダー平等とは、ジェンダーによる差別や偏見がなく、すべての人が平等に機会を得られ、同じように扱われることを意味します。そしてジェンダー平等は、社会や経済に多くのメリットをもたらします。例えば、女性も男性と同じように教育を受け、職業に就けるようになることで、人材の有効活用ができ、企業や経済の成長につながると言われています。また、女性が社会や政治に積極的に参加し、意見を発信することで、多様な価値観が尊重される社会となり、相互理解が深まります。その結果、偏見や差別が減り、社会全体が豊かになる可能性があります。ジェンダー平等は、個人や社会のためだけではなく、世界の持続可能な発展のためにも、非常に重要なテーマです。SDGsでは目標5でジェンダー平等を目指しているSDGs目標5は「ジェンダー平等を実現しよう」という目標です。具体的には、女性の地位向上や女性の権利保護、女性の社会進出の促進、女性と男性の平等な権利と機会の実現を目指しています。また、ジェンダー平等を実現するために、家庭内での家事の役割分担や、男性と女性の賃金格差の是正なども必要です。この目標の意義は、女性の人権・自由・権利を保護するだけでなく、女性が自らの能力を発揮し、社会で活躍できるようにすることです。またジェンダー平等は、男女格差だけでなく、LGBTQ+などセクシャルマイノリティの人々に対する差別や偏見の解消にもつながります。SDGs目標5の達成によって、より多様な人々が平等に活躍できる社会に近づくでしょう。ジェンダー平等の現在の状況は?ジェンダー平等を目指すためには、まず現在の状況と課題を把握することが重要です。そこでSDGsの観点から、ジェンダー平等の現状と課題を日本と世界に分けて紹介します。日本の状況日本では、ジェンダー平等に向けた取り組みが進んでいるものの、まだまだ課題が残っています。経済・教育・政治・健康の4分野で男女の格差を数値化している「ジェンダー・ギャップ指数」の総合順位で、日本は146か国中116位でした(2022年現在)。教育の分野では1位でしたが、政治分野では144位、経済分野では121位と低い順位となっており、政治や経済の分野では、いまだに女性の活躍が少ないとわかります。(出典:男女共同参画局)現在、政治や経済では男性が中心であり、いまだに女性の活躍は少ないと言えます。例えば政界では、衆議院議員463人のうち女性は46人で9.9%、参議院議員242人のうち女性は56人で23.1%、経済界でも上場企業の女性役員の割合は9.1%と低い状態です。(出典:衆議院)(出典:参議院)(出典:男女共同参画局)また、出産・育児の時に女性が休職や退職をした後、育児と両立しづらい労働条件のせいで復職したくても復職できないことがあります。そのため、職場での待遇やキャリアアップにおいて男女で差が生じており、女性の平均賃金が男性の約75%にとどまっていることにも影響しているでしょう。さらに、男性の育休取得率は年々増加しているものの、2021年度で13.97%と女性の85.1%と比べるとまだ低い状態で、女性の復職を難しくしている要因の一つと言えます。(出典:厚生労働省)この差をなくすために、休職後に復帰しやすい制度、育児休暇を男女関係なく取得できる環境を作ることが必要でしょう。政府や企業が積極的に取り組むことで、社会全体の意識が変わっていくことが期待されています。世界の状況世界のジェンダー平等の現状は、国や地域によって異なりますが、おおむね次のような課題があります。女性の教育機会の不平等女性が男性と同様の教育を受けられないことで、将来の社会進出の機会が奪われ、男女で格差が生まれている国もいまだに多くあります。労働市場における女性の待遇の不平等女性は、男性と同じ仕事をしているにもかかわらず、同じ賃金を得られない場合があります。アメリカでは、フルタイムで働く女性の賃金は、同じ労働条件で働く男性と比べて83.1%と低くなっています。(出典:独立行政法人日本貿易振興機構)また、女性が管理職・役職に就くことが難しい場合もあり、キャリアアップにおいても男性と差が生まれています。女性の健康や出産に対するケア体制の不十分女性には、健康上のリスクや出産に伴う負担があるため、適切な医療やケアが必要です。しかし、そのようなサービスが不十分であるため、女性の健康や出産に関する権利が侵害されている地域もあります。SDGsでは、こうしたジェンダー平等の課題に対して理解し、社会全体で取り組んでいくことが求められています。ジェンダー平等への取り組みをご紹介!ジェンダー平等を推進するために、世界各国で様々な取り組みが行われています。ここでは、学校・企業・社会における取り組み事例を日本と世界にわけて紹介します。日本の取り組み事例学校様々な学校で行われている取り組みを項目ごとにご紹介します。ジェンダーレス制服の導入(画像出典:ジェンダーレス制服|トンボ学生服)ジェンダーレス制服とは、性別によるデザインの差を減らし、性別に関係なく着用できるようにすることで、性の多様性に対応する制服のことです。ジェンダーレス制服は、組み合わせを自由化する方法と性差を感じさせないデザインの制服を導入する方法の2つに大きく分かれます。近年増えている方法は、女子のスラックス制服の採用です。ジェンダーに配慮できるうえに、防寒対策や自転車通学用としても利用しやすいことから、学校の先生や女子生徒からも好評のようです。他には、男女共通デザインのブレザー、身体のシルエットが強調されないスラックスなどを採用する学校もあります。学校生活での性別による区別を減らす昔から学校では「男子は君付け、女子はさん付け」と呼称を分けていたり、名簿が男女別になっていることがあります。近年では、先生が生徒に対して必ず「さん付け」で呼ぶことを決めたり、名簿を統一している学校が増えています。また、ランドセルの色も「男の子なら黒」「女の子なら赤」といった分け方は減り、カラーバリエーションが増えたため、子どもが好きな色を選ぶようになっています。このように、性別を基準にしてわけることが減ってきているのです。企業ここでは、ジェンダー平等に向けて取り組んでいる企業を2社ご紹介します。積水ハウス株式会社積水ハウスは、ジェンダー平等を推進するために、女性社員が働きやすい職場を目指したり、性の多様性を尊重したりするなど、様々な取り組みを行っています。例えば、女性社員のキャリア形成や管理職登用を促進するため、研修やメンタリング制度、育児休業・時短勤務などの制度を設けています。さらに同社が行う賃貸事業では、入居申込書類や電子申込フォーム、賃貸借契約書などにおいて、性別欄を削除したり、パートナーの選択肢を設けたりするなどの工夫をしています。これらの書式は、性の多様性に配慮したものであり、セクシャルマイノリティの人々が家を借りやすいようになっています。また、日本におけるLGBT平等法の制定を支持するキャンペーン「ビジネスによるLGBT平等サポート宣言」に賛同しました。これら男女平等への取り組みや性の多様性への配慮が評価され、同社は2022年に「ブルームバーグ男女平等指数(Bloomberg Gender-Equality Index)」において2年連続で優れた企業として選ばれました。この指数は、ジェンダー分野で優れた企業を投資家に紹介するために作られたもので、2022年には世界で418社(うち日本企業12社)が選出されました。(出典:積水ハウス株式会社)楽天グループ株式会社 楽天は、女性社員のキャリア支援や育児・介護支援、セクシャルマイノリティの従業員のサポートをすることで、ジェンダー平等の文化づくりに努めています。育児・介護支援の具体例として、社内託児所の整備、フレックスタイム制や時短勤務、妊娠・育児・介護・怪我・病気を理由とした在宅勤務制度などがあります。そして、2016年からは社内規定で同性パートナーも配偶者とし、慶弔休暇・見舞金といった福利厚生が受けられるようになっています。また楽天は、積水ハウスと同じく「ビジネスによるLGBT平等サポート宣言」にも賛同しています。同社の取り組みが評価され、2021年にセクシャルマイノリティの当事者が働きやすい職場を示す指標である「Work with Pride」で「ゴールド」を6年連続で受賞しました。(出典:楽天グループ株式会社 )社会ここでは、日本の官公庁や自治体で実施されているジェンダー平等の事例を紹介します。内閣府男女共同参画局による法整備内閣府男女共同参画局は、男女共同参画社会の実現に向けて、法制度や施策の策定・推進・評価を行っています。例えば「男女雇用機会均等法」や「女性活躍推進法」などの法律を整備することで、女性の活躍促進や男女不平等の是正に取り組んでいます。また、女性の活躍の「見える化」や男性の家事・育児への参加を呼びかけ、誰もが生きがいをもてる社会づくりを目指しています。自治体による同性パートナーの宣誓・証明制度この制度では、戸籍上同性であるカップルがパートナーとの関係を自治体に届け出ることで、自治体から独自の証明書が発行されます。この制度を利用すると、公営住宅に家族として2人で入居できるようになったり、病院での付き添いや救急車の同乗などが可能になったりします。2015年に東京都渋谷区と世田谷区から始まり、現在では300を超える自治体に広がっています。世界の取り組み事例ここでは日本以外の国で行われている取り組み事例を学校・企業・社会それぞれの分野ごとにいくつか紹介します。学校スウェーデンスウェーデンには、ジェンダー平等を重視する幼児教育施設があります。例えば、絵本やおとぎ話を使うときには、男女の固定観念にとらわれないようにしています。物語の内容は審査をして、同性カップルを登場させるなど筋書きを変更することもあります。また、おもちゃの種類による遊ぶ場所のきまりはなく、男女が一緒に遊べる環境をつくっています。さらに、先生は子どもたちに「彼」や「彼女」といった性別を示す代名詞ではなく、「hen」という中立的な代名詞を使って呼んでいます。これらの取り組みは、子どもたちが自分の性別や性的指向に関係なく、自由に自分らしく生きるように支援することを目的としています。カナダカナダのオンタリオ州では、学校教育において、性別や性的指向への理解を深め、差別や偏見をなくすことを目的とする、ジェンダー・セクシュアリティ教育を義務化しています。2015年から保健体育の授業で導入され、小学校から高校までの間で、性的同意などの性教育の内容から性的指向や性同一性などの多様性に関する内容まで幅広く学んでいます。このカリキュラムは、子どもたちが現代社会における性の問題やリスクに対処するために必要だと考えられました。カリキュラムでは、子どもたちの年齢や発達段階に応じて、適切な内容や方法でジェンダー・セクシュアリティ教育を行うことが求められています。ジェンダー平等やジェンダー多様性に対して若い世代が学ぶことで、自己や他者への理解につなげられます。企業マイクロソフト(Microsoft)社(アメリカ)アメリカのマイクロソフト社は、ジェンダーの多様性を認め、採用・昇進・報酬などの分野でさまざまな施策を実施し、社内のジェンダー平等に関するデータや報告書を毎年公開しています。2022年度の報告書によると、アメリカ国内のマイクロソフト社に勤務する男性の賃金を1.000ドルとしたとき、女性の賃金は1.007ドルでした。(出典:ダイバーシティ&インクルージョンレポート|マイクロソフト社)さらに同社は、女性の教育にも力を入れており、アメリカの大学や専門学校へ進学する女性向けに奨学生を募集しています。また、最新テクノロジーを無料で体験し学習できる、DigiGirlz Campという数日間のキャンプイベントを実施しています。ロレアル(L'Oréal)社(フランス)フランスの化粧品メーカーであるロレアル社は、女性管理職の比率を増やすために、積極的な採用や教育研修、充実した子育て支援策などを行っています。同社の女性比率は、全従業員の69%、取締役会の58%、執行委員会の26%、重要ポジションの54%、国際ブランドディレクターの59%となっています(2020年現在)。(出典:L'Oréal Group)このような取り組みが評価され、2023年3月には、Equileap社のジェンダー平等ランキングでフランス国内で1位、世界で11位に選ばれました。(出典:L'Oréal finance)また、セクシャルマイノリティのコミュニティを支援しており、性自認に基づく差別を拒否することを明記した従業員の人権方針があります。社会アイスランドアイスランドでは、男女の同一労働同一賃金を義務付けており、25人以上の従業員がいる企業や組織は、監査団体によって男女同一賃金であることが証明される必要があります。証明がない場合は1日につき50,000 アイスランド・クローナ(約48,000円)の罰金が課せられます。このような取り組みにより、女性に対する不当な給与格差の解消を目指しています。(出典:Equal Pay Legislation in Iceland|Radnica)インドインドでは、女性の地位向上を目指し、村落に「自助グループ(Self Help Group)」が設置されています。これは、女性が集まる自助グループが、金融機関と協力して貯蓄や融資などの金融活動を行い、経済的に自立することで、女性の社会進出を支援する制度です。グループの貯蓄は、メンバーが突然病気になったときなどに使われる緊急基金としても機能しており、不安を減らすことで生活の安定にも貢献しています。この取り組みによって女性の貧困状態をなくすことで、ジェンダー平等を目指しています。SDGs活動に興味がある方は「Socialgoo」がおすすめここまでSDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」の課題や取り組みについてご紹介しました。この記事をきっかけに、SDGsについて興味を持たれた方には「Socialgoo」がおすすめです!ソーシャルグッド(社会にとって良いサービスや活動)に特化したメディアであり、取り組み事例などSDGsにまつわる様々な情報を発信しています。ぜひ他の記事もチェックしてみてくださいね!まとめジェンダー平等の実現は、社会や経済に大きなメリットがあると分かっています。SDGsでは目標5でジェンダー平等を目指しており、課題を解決するために様々な分野で取り組みが進められています。学校・企業が取り組むだけではなく、私たち個人でも取り組めることがあります。例えば、ジェンダーによる偏見に注意を払うことや家事や子育てなどの分担を平等にすることなどです。ジェンダー平等は、私たち一人ひとりの意識と行動によって実現されるため、ジェンダー平等の重要性を再確認し、自分にできることを考えてみましょう。

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【徹底解説】SDGsとは?わかりやすく背景や現状、17の目標ごとの意味をご紹介します!

みなさんも一度はネットやニュースで見聞きしたことがあるかもしれないのが、SDGsという言葉。単語自体はなんとなく知っていても、中身はちょっと難しそうと思っている方も多いのではないでしょうか。難しそうに見えるSDGsですが、中身は生活と強く結びついていて、SDGsについて知れば知るほど、みなさんの身近なところにもSDGsが関わっていることがわかります。まずはSDGsとは何なのか、小学生や中学生のみなさんにも理解してもらえるように、わかりやすくご説明します!この記事の監修者小田 勝宣(おだ かつのり)第6回SDGs検定取得。SDGsに関連したWebメディア記事執筆やブログの運営など実績多数。大学事務職員時代にSDGsに関する企画立案、運営業務に携わったことからSDGsに興味を持つ。現在はSDGs未来都市に選定された「岩手町」へ移住し、地域おこし協力隊として、地方におけるSDGsの取り組み強化に貢献している。SDGsをわかりやすく説明すると?SDGsは「エスディージーズ」と読み、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことを表しています。簡単に言うと「いま課題となっている環境問題や社会問題を解決して、みんながこれからずっとより良い暮らしをできるようにしよう」と目指すことです。では、SDGsはなぜここまで広まったのでしょうか。その背景を解説します。SDGsが広まった背景SDGsが広まった背景には、次の三つのことが考えられます。国連で決められた先進国も発展途上国も共通の目標であるSDGsに取り組むことに大きな経済効果があることがわかった1.国連で決められた2015年の国連サミットで、2030年までに持続可能な社会を作ることを目標にした「2030アジェンダ」がつくられました。国連の全ての加盟国がこの計画に賛成して、一緒に実現していこうと決めたのです。2.先進国も発展途上国も共通の目標であるSDGsが世界的に話題となっているのは、国連に加盟している全ての国がSDGsを目標としているためです。「全部の国が目標にするのは当然じゃないの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実はSDGsの前身のMDGsは発展途上国の開発を進めるための目標でした。そのため、MDGsは飢餓や感染症への対策などで一定の成果をあげましたが、先進国は援助をする側だったため大きな注目がありませんでした。一方でSDGsは、発展途上国だけではなく、先進国にも課題があるとし、どの国も取り組める目標であるため、世界的に広まっているのです。3.SDGsに取り組むことに大きな経済効果があることがわかった先ほどご説明したように、確かにどの国も取り組むべき課題があったのですが、初めのうちはあまり注目されていませんでした。しかし、2017年に開催された「ダボス会議」という政治や経済のトップリーダーが集まる会議で「SDGsに取り組むと経済に良い効果がある」と発表されたのです。具体的には、12兆ドルを超える経済価値と、3億8,000万人の雇用創出が見込まれるとのことでした。この発表を聞いた経済界は、SDGsに関心を持つようになり、今では様々な企業がSDGsに取り組んでいます。SDGsの「持続可能」とは先ほど、SDGsとは「持続可能な開発目標」であるとご紹介しましたが、そもそも「持続可能」とは何でしょうか?「持続可能」とは、みんなが必要なものを無駄遣いせずに必要な分だけ使い、将来の人々に限りある資源を残せるように取り組みを続けていくことです。みんなが無理なく、将来のことを考えていれば、「持続可能な社会」を目指すことができます。「持続可能な社会」だと、次のようなメリットがあります。地球環境が良い状態で保たれる地球全体で貧困や飢餓が解消されるエネルギーを節約するので、コストの節約や二酸化炭素の削減ができる清潔な水や空気、美しい自然環境が保たれるため、心身ともに健康に暮らせるこうしたメリットを享受するためには、長い期間をかけて取り組んでいかなければなりません。そのため、無理なくできることからはじめようとする姿勢が大事なのです。SDGsにおける目標とターゲットの意味(出典:SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン|国際連合広報センター)SDGsには「17の目標」と「169のターゲット(具体目標)」があります。目標は、貧困・飢餓・教育の格差・環境問題・平和で公正な社会など、世界中にあるさまざまな問題の解決を目指して決められています。ターゲットは、この17の目標をより具体的にしたものです。それぞれのターゲットを達成することで、目標に近づけるとされています。SDGs「17の目標」をわかりやすく解説これから、SDGsの「17の目標」を一つひとつご紹介します。目標1.貧困をなくそう(出典:SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン|国際連合広報センター)貧困は様々な場所でたくさんの形がありますが、大きく分類すると二種類にわけられます。それは、1日2.15ドル未満で暮らさなければならず、必要なものも買えない状態の「絶対的貧困」と、その地域の他の人と比較して貧しい状態である「相対的貧困」です。また、金銭的な貧困だけではなく、教育や医療などのサービスを受けられないことも貧困の一つになっています。これらの貧困を世界中から全てなくし、全ての人が健康に生活できる状態を目指しています。目標1「貧困をなくそう」について、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてみてくださいね!SDGs目標1「貧困をなくそう」の取り組み事例と私たちにできること|socialgoo目標2.飢餓をゼロに(出典:SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン|国際連合広報センター)発展途上国では多くの人が飢餓に苦しんでおり、誰もが栄養のある食事をとれるようにすることが課題となっています。そのためには、単に食物の生産量を増やすだけではなく、食料を安全かつ安定的に届ける方法を考えることが不可欠です。また、生態系を守り、気候変動や災害に強く、環境に配慮した農法を行うことが重要です。このような持続可能な農業を目指すことで、飢餓をなくそうとしています。目標3.すべての人に健康と福祉を(出典:SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン|国際連合広報センター)すべての人が健康で幸せな生活を送れるように、衛生環境を整えたり、病気を予防したり、治療や介護などの健康サービスが受けられるようにしたりする必要があります。また、交通事故による死傷者を半減させること、化学物質や大気・水・土壌の汚染のせいで起きる病気を減らすことなどを目指しています。環境と福祉の点から、誰もが良い生活を送れるようにすることが目標です。目標4.質の高い教育をみんなに(出典:SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン|国際連合広報センター)世界には家庭の事情で働かなければならなかったり、紛争地域に住んでいたりして、学校に通えない子どもたちが多くいます。また、性別や民族によって教育を受ける権利が制限されている地域もあります。さらに、一度社会に出た人が新しい知識やスキルを身につけるために、いつでも学びたいことを学び直せるようにすることも大切です。全ての世代の人々が、どこでも質の高い教育を受けられるように目指しています。目標5.ジェンダー平等を実現しよう(出典:SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン|国際連合広報センター)世界には教育や福祉、職業などで性別による差別が多くあり、それをなくすために「ジェンダー平等を達成し、全ての女性及び女児のエンパワーメントを行う」という目標が掲げられています。「ジェンダー」とは、社会的に決められた「男らしさ」や「女らしさ」のことで、生物学的な性とは異なるものです。また「エンパワーメント」とは、個人が本来持つ能力を最大限引き出すことという意味です。性別ごとにある固定観念にとらわれることなく、女性が自分の力を最大限発揮できるような社会を目指すことで、ジェンダー平等に近づき、社会全体がよりよくなるとされています。目標6.安全な水とトイレを世界中に(出典:SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン|国際連合広報センター)誰もが安全な水を使えるように、世界のどこでも上下水道や排水処理施設、ごみ処理設備が整っている状態を目指しています。海水から真水を作る技術など、限られた水資源を効率よく使うシステムを作ることも必要です。またトイレについては、女性や子ども、弱い立場にある人が安全に使えるよう求められています。安全な水を安定して供給できるように確保し、衛生状態を管理することが目標です。目標7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに(出典:SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン|国際連合広報センター)世界中の全ての人が電気やガスなどのエネルギーを安く手に入れられることを第一の目標としています。そのためには、少ないエネルギーでたくさんの電気やガスを手に入れるための技術を発展させることが必要です。また、将来も安定してエネルギーを手に入れられるように、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを増やすことも目標となっています。目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」について、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてみてくださいね!SDGs目標7への取り組み9選【個人・企業別】現状と課題、5つのターゲットも解説|socialgoo目標8.働きがいも経済成長も(出典:SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン|国際連合広報センター)経済を成長させることと、誰もが働きがいのある仕事を持ち、人間らしい生活を送ることの両方が達成できる社会を目指しています。経済成長によって一部の地域や一部の人々だけが利益を得るのではなく、社会全体に経済発展の恩恵が分配されることが必要です。そうなっていくことで、仕事がなく貧困に苦しむ人を減らし、みんなが働きがいをもって働けるようになるのです。目標9.産業と技術革命の基盤をつくろう(出典:SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン|国際連合広報センター)安全に生活するために必要なインフラを、誰もが使え、質が高く、災害に強いような形で整備することが目標になっています。インフラには、道や発電所、インターネットなどが含まれ、これらが産業の基盤となっているのです。また、小さな企業でも資金調達できるように、金融サービスを利用しやすくすることが求められています。技術開発を支えるために、国から企業へ資金を提供することも重要となっています。目標10.人や国の不平等をなくそう(出典:SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン|国際連合広報センター)国と国の間の不平等や、国内の不平等をなくすことが目標です。国際的な決まりを定める場で途上国の発言を増やしたり、貿易で途上国に対して特別な待遇をすることが求められています。それぞれの国の中では、低所得者の所得をより早いペースで上げていくことや、年齢、性別、宗教、民族などのあらゆる理由で差別をしないことが目指されています。目標11.住み続けられるまちづくりを(出典:SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン|国際連合広報センター)全ての人がインフラの整った安全な住まいを持ち、スラムの状況が改善され、利用しやすい交通手段や公園などの公共スペースがある状態をつくることを目指しています。大気汚染やごみ処理に注意を払い、都市の環境を改善し、災害に強いまちづくりをすることが必要です。そして、文化遺産や自然遺産を守り、保つ努力をすることも求められています。安心安全でかつ、文化的にもよいまちを維持することが大切です。目標12.つくる責任・つかう責任(出典:SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン|国際連合広報センター)資源を節約したり、廃棄物を削減したりして、持続可能な消費と生産を行うことが目的です。捨てられてしまう食品の量を半分に減らすこと、化学物質や廃棄物を環境に害を与えないように管理すること、リサイクルやリユースを促進することが目指されています。つくる側の責任として、大企業や多国籍企業が持続可能な取り組みについて情報公開することや、国がものやサービスを買うときには持続可能な形を選ぶことが求められています。つかう側の責任として、一人ひとりが、持続可能な開発について関心を持ち、情報を持つようにすることも必要です。目標12「つくる責任・つかう責任」について、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてみてくださいね!SDGs目標12「つくる責任・つかう責任」とは?私たちにできることも解説|socialgoo目標13.気候変動に具体的な対策を(出典:SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン|国際連合広報センター)地球温暖化を防ぐために、温室効果ガスの排出量を減らし、自然環境を保全する取り組みを進めることを目指します。自然災害が起きたときに立ち直れるように、全ての国で防災と気候変動への対策に取り組む必要があります。とくに、防災意識を高めるために国民に防災教育をしたり、気候変動を緩やかにするための取り組みの啓発をしたりすることが重要です。目標14.海の豊かさを守ろう(出典:SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン|国際連合広報センター)海に住む生き物や海の資源を守り、海の環境を保全することを目指します。人間の活動による海の環境破壊をなくすため、魚を取りすぎないように漁業の方法を改善したり、海に悪影響を与える物質が流れるのを防いだりすることが必要です。農薬や洗剤が海に流れることで、これらに含まれる窒素やリンが増えてしまうのが「富栄養化」です。富栄養化の状態になるとプランクトンが増えすぎてしまい、魚が酸素不足で生きられなくなってしまうため、生物多様性を守るには富栄養化を防がなければなりません。目標15.陸の豊かさも守ろう(出典:SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン|国際連合広報センター)陸地に生息する生物や森林、水源などを保全するために、森林伐採や土地の乱開発を抑制し、自然の保護を目指します。生態系がもたらす自然の恵みを持続可能な形で利用することや、森林の管理、砂漠化した土地・土壌の回復によって、自然の豊かさを取り戻し、保つことができます。また、生態系を守るために、絶滅危惧種を保護したり、密猟や違法な取引をなくしたり、生態系に影響を与える外来種の侵入を防いだりすることが必要です。目標16.平和と公正をすべての人に(出典:SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン|国際連合広報センター)世界中で平和を実現するために、子どもに対する虐待や搾取を含めたあらゆる暴力の防止、汚職やわいろの解消などを目指します。誰もが司法を利用できるようにし、国の制度を公正なものにすることで、争いを公正な司法の判断で解決できるようになるのです。また、ものごとを決める際には、あらゆる人々の立場を代表する人たちによって話し合うべきで、取り残される人がいないようにすることが求められています。目標17.パートナーシップで目標を達成しよう(出典:SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン|国際連合広報センター)国際協力や民間企業の参加、技術移転などを通じて、今までご紹介した全ての持続可能な開発目標の達成を目指します。全ての国がSDGsの目標を達成するために予算を設定し、先進国は政府開発援助(ODA)などの途上国向けの資金や技術の援助をするように求められています。また、SDGsの目標がどれくらい達成しているかを測るため、データを集めて統計を取ることも必要となっています。持続可能な開発目標を達成するためには、国際的な協力が欠かせません。SDGsの達成度ここまでご紹介した17の目標は、どのくらい達成されているのでしょうか?ここで、SDGsの達成度を公開している報告書である「持続可能な開発レポート(Sustainable Development Report 2022)」を参考に、世界・日本の現状と課題についてご説明します。世界の現状と課題世界のSDGsの達成度は、2019年までは上がっていましたが、2020年以降は停滞しています。それは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行やロシアのウクライナ侵攻によって、世界中の経済が落ち込み、平和や安全の問題が起きているからです。そのため、貧困や経済成長、環境問題への取り組みが進まず、全てのSDGsの課題に影響しています。日本の現状と課題日本の達成度は世界163カ国中19番目と決して低くはなく、アジアでは一番高い達成度になっています。とくに達成できているのが以下の3つの目標です。目標4 質の高い教育をみんなに目標9 産業と技術革命の基盤をつくろう目標16 平和と公正をすべての人に一方で、以下の6つの目標には深刻な課題があるとされています。目標5 ジェンダー平等を実現しよう目標12 つくる責任・つかう責任目標13 気候変動に具体的な対策を目標14 海の豊かさを守ろう目標15 陸の豊かさも守ろう目標17 パートナーシップで目標を達成しようこれらの目標に向けて国や企業、そして私たち一人ひとりが意識して取り組むことが必要になります。私たちの生活と深く関わるSDGsSDGsは、貧困や環境問題、教育や健康など私たちの生活に深く関わる問題を解決しようと目指しています。SDGsを達成するためには、国や企業、そして私たち一人ひとりが協力して行動することが必要です。そのために、SDGsを理解し、自分たちに何ができるか考えることが大切です。日本政府の施策日本政府は2016年に「SDGs推進本部」を設置し、国内でSDGsを推進していくことと、国際的に貢献することの両方に取り組んでいます。また政府は「SDGs アクションプラン」を毎年定めており、最新版の「SDGs アクションプラン 2022」では以下の8つの重点課題が記載されています。人間(People)あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現健康・長寿の達成繁栄(Prosperity)成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション地球(Planet)持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備省・再生可能エネルギー、防災・気候変動対策、循環型社会生物多様性、森林、海洋等の環境の保全平和(Peace)平和と安全・安心社会の実現パートナーシップ(Partnership)SDGs 実施推進の体制と手段この8つの重点課題は「2030 アジェンダ」に掲げられている5つの「P」(People(人間)、Prosperity(繁栄)、Planet(地球)、Peace(平和)、 Partnership(パートナーシップ))に基づいています。さらにSDGs推進本部は「ジャパンSDGsアワード」を実施しており、SDGs達成に向けて優れた取り組みを行っている企業や団体を表彰しています。企業のSDGsへの取り組みSDGsの取り組みを実践している代表的な企業を2社ご紹介します。阪急阪神ホールディングス株式会社(出典:SDGsトレイン 未来のゆめ・まち号 フォトギャラリー|阪急阪神ホールディングス株式会社)大阪・京都・神戸などを結ぶ阪急電鉄と阪神電気鉄道では、2019年5月から日本で初めてのSDGsがテーマの列車である「SDGsトレイン 未来のゆめ・まち号」を運行しています。車両の外装に加え、SDGsの解説や国・自治体・市民団体・企業などの取り組みを紹介する約165種の車内ポスターなどを使い、列車全体でSDGsを紹介しています。また、「SDGsトレイン」は最新の省エネ車両を使っているうえ、実質100%再生エネルギーで運行されています。2020年9月からは東急グループとも協業し、「SDGsトレイン」の取り組みは関西から関東へと広がっています。この取り組みが評価され、阪急阪神ホールディングス株式会社は、第4回ジャパンSDGsアワードのSDGsパートナーシップ賞(特別賞)に選ばれています。株式会社セブン‐イレブン・ジャパンコンビニ大手「セブン-イレブン」では、食品ロスを削減し、食品リサイクルを推進するために、次のような取り組みをしています。納品期限の見直し一般的に、各店舗への納品期限は、製造から賞味期限までの期間の三分の一に設定されていますが、セブン-イレブンでは2014年からこれを二分の一に変更しています。これによって、各店舗に納入される前に廃棄されてしまう商品を減らせるのです。「てまえどり」を呼び掛ける店内ポップ「てまえどり」とは、購入してすぐに食べる場合には手前にある販売期限が迫った商品を選ぶことです。そうすることで、販売期限が過ぎた商品を減らせるため、食品ロスを削減できます。セブン-イレブンでは、「てまえどり」を消費者に呼びかけるためにオリジナルのポップを設置しています。「エシカルプロジェクト」(出典:お客様の消費行動の変化で加速するエシカル消費|株式会社セブン&アイ・ホールディングス)販売期限が迫った対象商品を電子マネーnanacoで購入すると、税抜販売価格の5%分のボーナスポイントが付与されます。対象の商品にはこのことが記載されている「エシカルシール」が貼られており、消費者である私たちにもわかりやすい仕組みになっています。販売期限の近い商品から積極的に購入してもらうことで、食品ロスの削減を目指しています。個人ができること私たち一人ひとりが日常生活の中で出来ることの一つに「エシカル消費」があります。「エシカル(ethical)」とは「倫理的な」という意味で、「エシカル消費」は「倫理的な消費」つまり、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動を意味しています。レジ袋を買わずに持ってきたマイバッグを使うことや、リサイクル素材を使用した商品を買うこと、地元の商品を買うこと(地産地消)がエシカル消費の例です。「企業のSDGsへの取り組み」でご紹介した、セブン-イレブンで行われているような取り組みを知り、それに協力していくことでもエシカル消費に貢献できます。日々の行動を少し変えるだけでSDGsに貢献できるため、気軽に挑戦してみてはいかがでしょうか。SDGs活動に興味がある方は「Socialgoo」がおすすめここまでSDGsについてわかりやすく解説し、私たちができることについてもご紹介しました。この記事をきっかけに、SDGsについて興味を持たれた方には「Socialgoo」がおすすめです!ソーシャルグッド(社会にとって良いサービスや活動)に特化したメディアであり、プロボノやSDGsへの取り組み事例など様々な情報を掲載中です。ぜひ他の記事もチェックしてみてくださいね!まとめSDGsについて、言葉の意味や17の目標、取り組み事例をわかりやすくご説明してきました。SDGsは、いま世界で課題となっていることを解決して、より良い暮らしをずっと送れるようにするための目標です。世界、日本にある様々な課題について、私たち一人ひとりがSDGsを通して理解し、取り組んでいくことが不可欠です。SDGsについてさらに理解を深め、無理なくできることに取り組んでみてください。

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【2022年SDGs達成度】ランキング上位国と日本の取り組み事例も紹介!

近年テレビ番組などでもよく見かけるようになったSDGsですが、日本ではどのような取り組みが行われているのでしょうか?そして、そもそも日本ではどのくらいの目標が達成できているのか気になりますよね。そこでこの記事では、世界のSDGs達成度ランキングを取り上げ、ランキング上位の国々の取り組みや、気になる日本の取り組み事例をご紹介します。この記事の監修者小田 勝宣(おだ かつのり)第6回SDGs検定取得。SDGsに関連したWebメディア記事執筆やブログの運営など実績多数。大学事務職員時代にSDGsに関する企画立案、運営業務に携わったことからSDGsに興味を持つ。現在はSDGs未来都市に選定された「岩手町」へ移住し、地域おこし協力隊として、地方におけるSDGsの取り組み強化に貢献している。2022年の日本は世界で19位!SDGs達成度ランキングとは?SDGs達成度ランキングとは、各国のSDGsの取り組みを100点満点で点数化し、ランキング化したものです。ランキングは、国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」が作成した「持続可能な開発報告書(Sustainable Development Report)」で発表されています。2022年度版のランキングでは、日本の順位は世界163カ国中19位、アジアでは1位でした。世界163カ国中19位と聞くと、それほど悪くはない気がしますよね。では、日本以外で上位にランクインしたのはどの国なのでしょうか?次の「達成度ランキング1〜20位」で20位までにランクインした国をご紹介します。達成度ランキング1~20位2022年度版SDGs達成度ランキング1〜20位は以下の国々です。1位 フィンランド2位 デンマーク3位 スウェーデン4位 ノルウェー5位 オーストリア6位 ドイツ7位 フランス8位 スイス9位 アイルランド10位 エストニア11位 英国12位 ポーランド13位 チェコ14位 ラトビア15位 スロベニア16位 スペイン17位 オランダ18位 ベルギー19位 日本20位 ポルトガル実は20位までにランクインしているのは、日本を除くとヨーロッパの国々だけです。このことから、ヨーロッパの国々はSDGsに高い関心を持ち、行動に移していることがわかります。とくに1〜4位に北欧の国々がランクインしたのは、北欧ではSDGsの取り組みが率先して行われているためだと考えられます。後ほど、「達成度ランキング上位の国の取り組み事例」でこれらの国々の先進的な取り組みをご紹介します。これまでの日本のランキング推移日本のランキングの推移は以下の通りです。2016年:18位2017年:11位2018年:15位2019年:15位2020年:17位2021年:18位2022年:19位日本の順位は近年下がり続けています。その理由は、いまだに多くの「深刻な課題」が残されているからです。日本が抱える「深刻な課題」について、詳しくは「日本は6つの目標に『深刻な課題』|目標別の対策事例」でご紹介します。世界全体の達成状況世界全体のSDGsの達成状況はどうなっているのでしょうか?世界各国の達成度の平均点を見てみると、2019年までは進展していたのですが、実は2020年以降は66点で停滞しているのです。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行によって経済が停滞しているため、貧困や経済成長が課題となっていたり、環境問題への取り組み具合が遅れていたりしています。また、ロシアによるウクライナ侵攻などの軍事衝突によって、安全保障やエネルギー価格の上昇なども懸念されており、さらに平和や格差問題に取り組むことが課題となるでしょう。世界全体でSDGsの達成状況が停滞しているなか、ランキング上位の国々はどのようなことに取り組んでいるのか、次にご紹介します。達成度ランキング上位の国の取り組み事例1位:フィンランド「世界一幸せな国」としても知られているフィンランドではこのような取組みが行われています。・SDGsスタートアップへの資金提供フィンランドでは、SDGsスタートアップがたくさんあります。SDGsスタートアップとは、SDGsに配慮した技術を活かそうとしている新興企業のことです。SDGsスタートアップがたくさん生まれる背景には、フィンランド政府直営の研究所「フィンランド技術研究センター(VTT)」があります。VTTが投資したり、研究機器を貸し出したりすることで、SDGsスタートアップが活発になっているのです。・レスポンシブルツーリズム(出典:Visit Finland)レスポンシブルツーリズムとは、「責任ある観光」と訳され、「観光に携わる人はその土地の環境や文化に与える影響に対して責任を持つべきだ」という考えです。国が定めた基準に則り、サステナブルな取り組みをしているホテルや旅行会社には「サステナブル・トラベル・フィンランド」という認証が与えられます。この認証があるかどうかで観光客の行動が変わるため、観光業界は環境や文化の保全に積極的に取り組んでいます。2位:デンマークデンマークは食のSDGsに力を入れています。・オーガニックフードの普及デンマークでは、オーガニックフードが学校給食でも使われるほどに広く普及しています。オーガニックフードは、強い農薬や化学肥料を使用しないため、土壌や河川に対する環境負荷が低いことが特徴です。・食品ロスの削減デンマークでは、食品ロスの削減に向けて、様々なサービスがあります。例えば、余った食品を専用のアプリからリーズナブルに提供するサービスや、他の店では廃棄される、パッケージ破損・賞味期限切れなどの食品のみを扱うスーパーがあります。3位:スウェーデン環境にも人にも優しい国を目指しているのが、スウェーデンです。・女性の社会進出のための法整備スウェーデンでは、例えば大臣の半数が女性であるなど、政治や企業の場で女性が多く活躍しています。また、育児休暇を取得した後も元の職場に復帰できるように法律に定められているため、女性の社会進出がしやすくなっています。他にも、父親のみしか使用できない育児休暇が90日分あるなど、男性の子育て支援にも国として取り組んでおり、男性の育休取得率は約8割に迫っています。(出典:内閣府)これらの取り組みにより、母親だけに任せることなく、育児をすることができる環境が整っています。・ゴミの再利用スウェーデンで出されるゴミの99%がリサイクルされたり発電に使われたりしています。ゴミがきちんと再利用されるとわかっているからこそ、積極的なゴミの分別にもつながっています。4位:ノルウェーノルウェーは環境に優しい街づくりを目指しています。・電気自動車の普及実は、ノルウェーの新車販売数に占める電気自動車の割合は2022年には79.3%にもなっています。同年の日本の1.4%と比べると、とても高い割合です。ノルウェーでは、電気自動車に対する税制上の優遇を行うなど、国として電気自動車を普及させようと取り組んでいることが、高い割合となっている理由のひとつです。(出典:ノルウェー|欧州代替燃料観測所|EU)(出典:燃料別販売台数(乗用車)|一般社団法人 日本自動車販売協会連合会)・「カーフリー」政策首都オスロでは都市部への車の出入りを制限する「カーフリー」政策が行われています。市内を走る車が少ない分、歩行者天国が多く、自転車専用レーンの整備もすすめられています。このような取り組みが評価され、オスロ市は環境改善に取り組む都市として、「欧州グリーン首都賞」を2019年に受賞しています。5位:オーストリアオーストリアは脱炭素政策が積極的に行われています。・再生可能エネルギーの使用オーストリア政府は以下の目標をかかげています。2040年までに温室効果ガス排出実質ゼロ2030年までに国内で生産される電力をすべて再生可能エネルギーで賄う実際に、全発電量のうち再生可能エネルギーが占める割合は、すでに80%近くに達しているのです。アルプス山脈やドナウ川など、水資源に恵まれているため、水力発電の割合が大きく、総発電量の60%となっています。水力発電を重視した政策が長年行われてきた結果、オーストリアは脱炭素先進国となったのです。(出典:2021年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報)|特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所)日本は3つの目標が「達成済み」|目標別の取り組み事例日本は、目標4・9・16の3つが「達成済み」とされています。これら3つの目標に関連のある、企業や団体の取り組み事例を紹介していきます。目標4「質の高い教育をみんなに」・株式会社リクルートリクルートが提供する「スタディサプリ」は、「教育環境格差の解消」をミッションに掲げています。場所や環境を選ばないオンラインでの学習サービスが広まることで、どこにいても高品質な教育を受けることができます。・SMBC 日興証券株式会社SMBC 日興証券は、各世代のニーズに応じた金融経済教育を行っています。金融経済教育の提供を通して、正しい資産形成、さらには健全な資本市場の実現に貢献していくことを目標としています。目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」・NTTインフラネット株式会社NTTインフラネットは、浸水情報をリアルタイムで知らせる浸水検知システム(GAIA FITS®︎)を提供しています。このシステムによって、現地に直接調査をしに行かなくても、浸水状況をリアルタイムで把握できるようになります。・長野県伊那市(出典:伊那市)長野県伊那市では、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しています。例えば、「ぐるっとタクシー」というサービスでは、乗合タクシーを使いたい住民が出発地と目的地を指定すると、そこまでの経路をAIが自動で計算し、配車します。この乗合タクシーが、免許証を返納し、移動手段がなくなってしまった高齢者の移動手段として生活を支えています。このほかにも、モバイルクリニックや、ドローン、自動運転等のテクノロジーを活用することで、誰もが幸福な生活を送ることができる「しあわせのまち」を目指しています。目標16「平和と公正をすべての人に」・株式会社飯島産業ユニフォームや制服の企画・製造を行う飯島産業は、「フェアトレード」に取り組んでいます。フェアトレードとは、途上国で作られる原料や製品を適正な価格で購入し、途上国に住む人の生活改善や自立を目指す公平・公正な貿易のことです。飯島産業は国際フェアトレード認証コットンを使用したユニフォームを供給しています。・日本航空株式会社(JALグループ)JALグループは2019年に「JALグループ人権方針」を制定しました。また人権への想いとして、ホームページに以下の文章を掲載しています。JALグループは、事業活動を通して、すべての人権が尊重され、安心して活躍できる社会の実現を目指しています。(出典:人権の尊重|サステナビリティ|日本航空株式会社)航空機内での人身取引の防止に努めているほか、ハラスメントや長時間労働のない職場に向けて取り組んでいます。日本は6つの目標に「深刻な課題」|目標別の対策事例「達成済み」とされた目標がある一方、以下の6つの目標は、日本が抱える「深刻な課題」とされています。これらの目標に対して、達成に向けてどのような取り組みが行われているのか、ご紹介します。目標5「ジェンダー平等を実現しよう」・エスビー食品株式会社エスビー食品は、人材の多様化を推進するために「S&Bポジティブアクション」を制定しました。その中では、労働時間の是正のために平均総実労働時間の目標が定められていたり、ジェンダー平等のために女性管理職比率や女性採用比率の改善などが定められたりしています。産休・育休取得者対象セミナーや事業所内保育園の設置など、育児と仕事の両立を支援する取り組みも多くあります。人材の多様化のために、誰もが働きやすい環境づくりを目指しているのです。(出典:組織の人材多様化推進|サステナビリティ|エスビー食品株式会社)・アクセンチュア株式会社アクセンチュアでは、ジェンダー平等を目指して、男性育休ロールモデルを社内報で取り上げたり、女性社員のキャリア意識向上のための研修をしたりしています。また、2006年に女性社員が最大限の能力を発揮して活躍できるようにするために、所属や役職を越えた組織である「Japan Women's Initiatives(JWI)」が発足しました。これらの取り組みの結果、2021年に日経WOMAN「女性が活躍する会社Best100」で総合1位を受賞しました。(出典:平等の文化のある職場環境を目指して|インクルージョン&ダイバーシティ|アクセンチュア株式会社)目標12「つくる責任 つかう責任」・株式会社ファーストリテイリングユニクロなどを運営するファーストリテイリンググループは、「服のチカラを、社会のチカラに。」をビジョンに、商品のリユース・リサイクル活動をしています。まだ着られる服は世界の難民・国内避難民などへ寄贈しています。着られなくなった服は、新しい服の原材料や、固形燃料などの産業用資材にリサイクルしています。(出典:サステナビリティ|株式会社ファーストリテイリング)・株式会社コークッキング株式会社コークッキングが運営するTABETEは、飲食店で余ってしまった食品を消費者である「食べ手」につなげるサービスです。売れ残りの食品は廃棄されることが多いですが、TABETEで呼びかけて買ってもらうことで、食品ロスを減らせます。TABETEでは値引きをしている飲食店もあるので、消費者もお得に食べられます。つくる側もつかう側もメリットを感じながら、SDGsに貢献できるサービスです。目標13「気候変動に具体的な対策を」・パナソニック ホールディングス株式会社(出典:パナソニックホールディングス株式会社)パナソニックは、2050年までに「創るエネルギー」が「使うエネルギー」を超えることを目標にしています。具体的には、脱炭素エネルギーの普及のため、3種類の電池を組み合わせた自家発電の実証に取り組んでいます。また使うエネルギーの削減のため、商品の省エネ性能の向上にも取り組んでいます。・ダイキン工業株式会社ダイキン工業は、オゾン層の破壊や地球温暖化を防ぐために、次世代冷媒の実用化を推進しています。冷媒とは、エアコンや冷蔵庫などに使われている、熱を運ぶガスです。かつて使われていた「HCFC」や「HFC」という冷媒はオゾン層の破壊や地球温暖化の原因になっていました。ダイキン工業はこれらの代わりに低温暖化冷媒である「R32」を採用し、地球温暖化防止に取り組んでいます。目標14「海の豊かさを守ろう」・株式会社商船三井商船三井は海洋汚染防止のため、船舶の廃棄物や不要な油を船内で分別・処理しています。またプラスチックごみを陸に持ち帰ることを徹底しており、海中のマイクロプラスチック(微小なプラスチック粒子)も、船舶に装置を搭載して回収しています。・シャボン玉石けん株式会社シャボン玉石けんは、企業理念として「健康な体ときれいな水を守る」を掲げており、無添加せっけんを製造しています。一般的な石けんには、合成界面活性剤や香料・着色料などの添加物が入っていることが多いです。しかし同社の無添加石けんは、排水として海や川に流れ出ても、微生物や魚のエサになる環境にやさしい石けんです。目標15「陸の豊かさも守ろう」・住友林業株式会社(出典:住友林業株式会社)住友林業は、高層建築への木材活用に取り組んでいます。実は国産材の供給量は、木の年間成長量の20〜25%に留まっており、森林資源の余剰分が年々増加しています。同社は、高さ350mの木造超高層建築物を2041年に実現する「構想W350計画」を2018年にまとめました。この計画では、同社の木造住宅の約8,000棟分に相当する、185,000㎥もの木材を使用します。木材を適切な量だけ使うことで、森林の状態をよくすることができます。そのためには、木材を高層建築にも活用していくことが求められています。(出典:街を森にかえる環境木化都市の実現へ木造超高層建築の開発構想W350計画始動|住友林業株式会社)・株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所ソニーコンピュータサイエンス研究所は、砂漠化が進んだ土地を回復させ、農地にする取り組みをしています。この取り組みでは、種と苗以外一切持ち込まず、植物の特性を生かして生態系をつくっていく「協生農法」という方法を実践しています。2015年から、アフリカのブルキナファソにある砂漠化した土地で協生農法を導入したところ、1年間で砂漠化を逆転させ、森林生態系の回復に成功しました。目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」・博報堂DYグループ×JANIC博報堂DYグループとJANIC(特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター)は、身の回りにあるお願いにSDGsに関する「ひとこと」を加えた、「ひとこと多い張り紙」を作成しました。例えば、目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を題材にした張り紙には、「電気の使えない生活に想いを馳せながら 退室時には消灯してください」というメッセージが書かれています。(出典:ひとこと多い張り紙|SDGs理解促進ツール|JANIC)「ひとこと多い張り紙」は、SDGs理解促進ツールとして利用してもらえるように、JANICのホームページにて無償で公開されています。・ヤマハ株式会社ヤマハは、器楽演奏体験を提供する「スクールプロジェクト」をインドで実施しています。インドは人口が多く市場としても大きいですが、実は公教育のカリキュラムに音楽教育がありません。同社はプロジェクトを通して、インドの子どもたちが音楽にたくさん触れられるように取り組んでいます。SDGs活動に興味がある方は「Socialgoo」がおすすめSDGsに関する活動をもっと知りたいという方におすすめな「Socialgoo(ソシャグ)」。ソーシャルグッド(社会にとって良いサービスや活動)に特化したメディアであり、プロボノやSDGsへの取り組み事例など様々な情報を掲載中です。ぜひ会員登録をして他の記事もチェックしてみてくださいね!まとめ日本のSDGs達成度ランキングは19位でした。ランキング上位の国では、政府・企業・国民が力を合わせている取り組みが多く、皆で手を取り合って達成を目指すことが大切と言えそうです。また取り組みに直接参加しなくても、SDGsに取り組んでいる企業・団体の商品やサービスを積極的に選ぶことでも、SDGsに貢献できます。より多くの方がSDGsに関心をもち、購入や参加によってSDGsに取り組むことが、達成度ランキングの順位を上げるためには必要そうです。

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