日本ではおよそ6人に1人が「貧困」状態にあると知っていますか?SDGsでは「誰一人取り残さない」という原則があるにもかかわらず、今の社会では格差が開いており、この原則からかけ離れた状態になっています。日本でも問題となっている貧困や格差をどのようになくしていくのか、一緒に考えていきましょう。この記事の監修者小田 勝宣(おだ かつのり)第6回SDGs検定取得。SDGsに関連したWebメディア記事執筆やブログの運営など実績多数。大学事務職員時代にSDGsに関する企画立案、運営業務に携わったことからSDGsに興味を持つ。現在はSDGs未来都市に選定された「岩手町」へ移住し、地域おこし協力隊として、地方におけるSDGsの取り組み強化に貢献している。SDGs目標1「貧困をなくそう」とは?SDGs目標1「貧困をなくそう」には「あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ」という目標が掲げられています。貧困は「発展途上国」と呼ばれている地域だけではなく、先進国にもあります。貧困には金銭的な貧しさのイメージがあるかもしれませんが、それだけではなく、教育や医療などのサービスが受けられていない、公正な権利がないといったことも含まれています。SDGsはこれら全ての貧困に終止符を打つことを目標としています。SDGs目標1で設定されている7つのターゲットSDGs目標1「貧困をなくそう」の7つのターゲットは次の通りです。1.12030 年までに、現在 1 日 1.25 ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。1.22030 年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる。1.3各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する。1.42030 年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、すべての男性及び女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する。1.52030 年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。1.aあらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国をはじめとする開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるため、開発協力の強化などを通じて、さまざまな供給源からの相当量の資源の動員を確保する。1.b貧困撲滅のための行動への投資拡大を支援するため、国、地域及び国際レベルで、貧困層やジェンダーに配慮した開発戦略に基づいた適正な政策的枠組みを構築する。(出典:外務省「持続可能な開発のための2030アジェンダ(仮訳)」)世界的には「1日1.25ドル未満で生活する人々」と具体的に定義された貧困を終わらせ、各国ではその国ごとの貧困層を半減させることが目指されています。ちなみに、この目標ができたときには1日1.25ドルだった基準が、物価変動によって、2015年10月には1日1.90ドル、2022年9月には1日2.15ドルに変更されています。また、目的を達成するために、必要な支援や保護を受けられるようにすること、経済的資源について平等な権利を与えること、災害時の脆弱性を軽減させることが求められています。貧困問題に対する世界や日本の取り組みこれらの目標に対して、実際にどのような取り組みが行われているのでしょうか?世界や日本の取り組みを見ていきましょう。世界の取り組み・グラミン銀行のマイクロファイナンスバングラデシュにあるグラミン銀行は、貧困層を対象にした比較的低金利の無担保融資(マイクロファイナンス)を行っています。通常の銀行だと、ある程度の資産がなければ融資を受けることができません。資産がほとんどない状態では、地主などから高い金利でお金を借りるしかなく、その利子のせいでさらに貧困になってしまうという悪循環に陥ってしまっていました。しかし、グラミン銀行は返済能力があるかわからない貧困層、特に女性に融資を行いました。定期的に銀行員が顧客のもとに赴き、融資や貯蓄の手続きをするだけではなく、顧客の生活も改善させていました。その結果、借金の返済が促されるため、グラミン銀行は利益を上げることに成功しました。グラミン銀行はバングラデシュの貧困層の生活を改善させるとともに、企業としても成功したのです。日本の取り組み・株式会社ジモティー誰かがいらなくなったものを、無料あるいは低価格でもらうことができるサービスで有名なジモティー。ジモティーのユーザー調査によると、日本のひとり親世帯の約45%(約65万世帯)が利用しているそうです。この調査結果を受けて、2020年にはひとり親家庭へ使っていないものを譲った方に対して、ギフト券を配布する「ひとり親家庭応援キャンペーン」を実施しました。また、2018年にはひとり親家庭を優先に物品の受け渡し会を開催しています。子どもたちの貧困をなくすことを目指し、ひとり親に対する支援を続けているのです。(出典:スタッフブログ|ジモティー)貧困に対して個人でできること先ほどご紹介した取り組みは、企業の取り組みでした。では、私たち一人ひとりが貧困に対して何ができるか考えていきましょう。貧困についての現状を知る貧困に対して何かしたい!と思っても、貧困の現状がわからないと何をすればよいか悩みますよね。何か行動を起こす前に、まずは貧困の現状を知るところから始めると良いでしょう。この記事でも後ほど、貧困について解説し、貧困問題の現状をご紹介するのでぜひご覧ください。支援団体への寄付や募金行動に移しやすい取り組みは、寄付や募金でしょう。しかし、支援団体がたくさんありすぎて、どこに寄付したらよいのかわからない方もいるのではないでしょうか?そこで、寄付や募金を行う支援団体の選び方をご紹介します。どんなひとを支援したいか一口に支援団体といっても、団体ごとによって目的とする支援先が変わります。例えば、難民を助ける会(AAR Japan)であれば世界中の難民の支援、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンであれば国内外の子どもたちの支援を主要目的としています。みなさんが支援したい人に支援をしてくれる団体を探してみましょう。今までの活動実績が公開されているか集められた寄付金や募金を、どのように使っているかが一番気になりますよね。公式ホームページやパンフレットなどで、具体的な活動報告が見られるところに寄付するとよいでしょう。特定非営利活動法人(NPO法人)や公益法人などの法人格を取得しているか最後に、その支援団体が法人格を取得しているかどうかを確認してみましょう。なぜ法人だと安心かというと、法人には明確な会計を行う義務があるからです。NPO法人は情報公開が前提でかつ認証も必要であり、公益法人も国が定める基準を満たした法人だけに認められるので、とくに安心出来ると思います。国際的に認められた特定非営利活動法人はNGOと呼ばれることもあります。ちなみに、例に挙げたAAR Japanは特定非営利活動法人(NGO)、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは公益社団法人です。これら3つの判断材料を頭に入れながら、みなさんの目的に合う支援先を見つけてみましょう。ボランティアに参加金銭的な支援だけではなく、自分で直接サポートしたいと考えている方には、ボランティアがおすすめです。実は、NPO法人の4割以上が後継者不足を課題としており、6割以上が人材確保や教育を課題としているのです。また、企業との共同事業や、専門家が自らの知識を活かしてボランティア活動を行う「プロボノ」が求められていることからも、専門的な能力を持つ人が足りないことがわかります。とはいえ、求められている分野は広報・IT・マーケティングなどであり、特殊な専門性が必要なのではなく、これらの分野で経験のある人が求められているようです。そのほかにも事務作業や現地での支援活動などもあるため、ボランティアをやってみたいという気持ちがあれば、ぜひチャレンジしてみてくださいね。(出典:令和2年度 特定非営利活動法人に関する実態調査|内閣府)フェアトレード商品の購入実は、みなさんがお買い物をするときにフェアトレード商品を買うだけでも、遠く離れた発展途上国の貧困に対して、取り組みが出来るのです。フェアトレードとは、直訳すると「公平・公正な貿易」で、発展途上国でつくられる原料や製品の生産者や労働者の労働環境・賃金を保障した貿易のことです。生産者に正当な対価が支払われることで、発展途上国の人々の貧困をなくそうとしている取り組みです。このフェアトレードの基準が守られて製造され、認証を受けた製品には「国際フェアトレード認証ラベル」が付いています。おもにチョコレート・コーヒー・果物・コットン製品などに付いているので、ぜひ探してみてください!「貧困」には2つの意味がある実は「貧困」には「絶対的貧困」と「相対的貧困」という二種類の貧困があります。絶対的貧困絶対的貧困とは、地域に関係なく、最低限の生活水準が維持されていない状態です。医療や教育等のサービスが受けられていないことが多く、必要な食料品や衣服等が買えないほどに所得が低い状態にあるのです。世界銀行は、2022年10月時点で「1日あたり2.15ドル」を判断基準とし、それ以下の所得の人々を絶対的貧困者としています。相対的貧困相対的貧困とは、その地域の大多数の人々と比較して貧しい状態のことです。可処分所得の中央値の半分以下の所得の人々のことを相対的貧困者と定義しています。地域内での所得水準と比較しているため、相対的貧困率はその地域の格差を表していると言えます。日本と世界の貧困問題の現状「絶対的貧困」と「相対的貧困」の違いがわかったところで、日本と世界の貧困問題をご紹介します。日本の貧困問題日本は相対的貧困率が高く、2018年時点で15.7%、つまり、およそ6人に1人が相対的貧困なのです。とくに高齢者やひとり親世帯に多いとされており、高齢者の治療費や介護費、子どもの学費などを払うことが難しくなっていることが問題です。日本では子どもの貧困が深刻で、大学などの高等教育への進学をあきらめたり、非行や暴力をしたり、虐待を受けたりする子どももいます。また、習い事をしたり、文化施設を見学したりできないことで、経験の格差も広がっています。(出典:相対的貧困率|データブック国際労働比較2022|労働政策研究・研修機構)世界の貧困問題国連開発計画が導入した「多次元貧困指数 (MPI)」は、健康・教育・生活水準という多次元の貧困を表しています。多次元貧困層が多いのは、サハラ以南のアフリカと南アジアで、全体の84.5%がこの2地域に存在することから、貧困には地域の偏りがあることがわかります。また、この2地域のなかでも国ごとに貧困率が異なっており、地域内でも格差が大きくあることがわかっています。さらに、ジェンダーによる格差も問題となっており、例えば南アジアのアフガニスタンでは、学校に行けない女子の割合が44.0%と、男子の24.8%に対し高い数値となっています。このように、金銭面だけではない多次元の貧困が問題となっているのです。(出典:2019年グローバル多次元貧困指数|国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所公式サイト)貧困が起こる主な原因とは?では、なぜ貧困は起きてしまうのでしょうか?貧困が起きる主な原因をご紹介します。食料が届かない発展途上国では、食料があっても、適切に保管したり、長期保存のための加工技術が十分でなかったり、適切に運ぶための手段がなかったりして、食料が届かないことがあります。また、需要が大きい国に食料が流れてしまい、供給されないこともあります。十分な教育を受けられない発展途上国では、労働力として使われていたり、学校が遠くにあったり、紛争地帯だったりして、教育が受けられていない子どもが多くいます。また、ジェンダーや民族による格差もあり、国内での教育格差につながっているのです。その結果識字率が低下したり、定職につけなかったりして、貧困に陥ってしまいます。紛争や内戦紛争地域に留まって巻き込まれた人々も、そこから逃れるために難民になった人々も、生活用品が不足したり職を失ったりして生活水準が下がり、貧困に陥ってしまいます。紛争や内戦の状態では暴力が横行し、衛生状態や医療環境が悪くなり、安全ではなくなってしまうのです。自然災害地震や台風、サイクロンなどの自然災害が起きると、経済損失が発生し貧困に陥ってしまうのです。例えば、干ばつによって農作物が育たなくなったり、地震によって建物が倒壊し、住まいや仕事場がなくなったりすることもあります。親が失業してしまった家庭では子どもが労働力として使われ、教育が受けられなくなることもあるなど、自然災害のせいで別の貧困の原因を引き起こしてしまいます。まとめSDGsの目標1「貧困をなくそう」は、あらゆる場所であらゆる形態の貧困をなくすことを目標にしています。世界には健康・教育・食料などが十分でないところも多くあり、絶対的貧困の状態でなくても、生活に困っている人がたくさんいます。そして、日本では相対的貧困率が高いことが問題となっています。このような現状を理解し、みなさんができることから取り組むことで、貧困を抱える人々の支援につながり、世界から貧困をなくすことに近づくのではないでしょうか。
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